ハンドドリップといってまず思い浮かべるのはドリッパーにペーパーフィルターを入れた方法だと思いますが、コーヒー専門店ではステンレスのメッシュフィルターを使うこともあります。このメッシュフィルターはもちろん家庭でも使えますので、これをペーパーフィルターと比べてみました。

はじめに:メッシュフィルターと今回の豆

メッシュフィルターの特徴のひとつはコーヒー豆に含まれる油脂分の透過。油脂はペーパーフィルターを透過せずに残りますが、メッシュフィルターでは濾されず、抽出されるコーヒーにそのまま含まれるため味がまろやかになるということです。家系ラーメンの油多めと似て… いませんね(失礼しました)

メッシュフィルターと言って今でも思い出すのは小猿珈琲のみどりさんです。初めてお会いしたのは高野山で行われたJapan Coffee Festivalで、エレガントなエチオピアを淹れるために選んだのが金属フィルターでした。

小猿珈琲, Japan Coffee Festival 2019 in 高野山
好きなコーヒーは「繋がる珈琲」だという小猿珈琲のみどりさんは初対面でも話しやすい人で、金属フィルターの良さと、選んだエチオピアとフィルターの相性を熱心に語ってくれました。

その後、私も良さそうなメッシュフィルターをいろいろ探したのですが、灯台下暗し、でしょうか。今の場所に引越して来てから近所のお店でいいものを見つけてしまいました。これが今回の主役です。

63 COFFEEMAKERの外観
63 COFFEEMAKER doublewall stainless steel filter
メッシュフィルターのコーヒーメーカーはいろいろなデザインのものがありますが、私はこの竹製のハンドルが気に入っています。部屋に飾ってもオシャレです。

特徴は、フィルター部分が非常に細かいメッシュと、小さな穴が無数に開いたプレートの二重構造になっていること。

63 COFFEEMAKERのメッシュ部分拡大
メッシュの二重構造がお分かりいただけるでしょうか。内側のメッシュはかなり細かいです。

メッシュフィルターはスッキリした味が出せるのが特徴ですが、この二重構造によってお湯の注ぎ方を変えればコクも出せるという宣伝文句に惹かれて選んでしまいました(それと、ハンドルのデザイン)。

普段は主に浅煎りのコーヒーを淹れる時に使っていますが、実はペーパーフィルターで淹れたコーヒーと味を比べたことはありませんでした。今回は敢えて中煎りの豆を使ってペーパーフィルターと比べてみます。前回の「やっぱりKalitaが好き」でも使ったインドネシア ガヨマウンテンを今回も使います。

中煎りのインドネシア ガヨマウンテン
新たに焙煎しましたが、色を比べると前回「やっぱりKalitaが好き」で使った豆よりも若干深めのようです。ホームローストですから、毎回まったく同じに焙煎するのは難しいです。

対戦相手には無印良品のドリッパーを選びました。準備の仕方は基本的にメッシュフィルターも同じです。「十人十色のハンドドリップ:準備編」を参照してください。

コーヒーに少量のお湯を注いで蒸らす
準備編」ではドリッパーの中に入れたコーヒー粉にお湯を注いで蒸らすところまで説明しました。

MUJIドリッパーで中煎りのコーヒーを淹れる

台形で小さな穴が1つ開いた「メリタ」と同じ構造のMUJIドリッパーは「手堅い」ドリッパーの印象があります。今回は中煎り代表に選びました。このMUJIドリッパーの詳細は前々回の「MUJIのドリッパーって、どぉ?」を参考にしてください。

MUJIドリッパーで中煎りのコーヒーを淹れる
「の」の字を描きながら少々ゆっくり目に、注ぎ分けずに一度にお湯を注ぎます。後は小さな1つ穴からサーッと抜けていくのを待ちます。

サーバーからカップに注ぐと、鮮烈な香りがします。口に含むと、コーヒーのすべての要素が揃ったような、複雑で豊かな味。ほのかな苦味とフルーティーな酸味が同時に感じられます。その苦味が、上品。

中煎りですが、思った以上にコクがあります。「フルボディ」とでも言うべきそのコクは、まるで赤ワイン。温度が少し下がっても華やかな「フローラル」な香りが絶妙で、徐々にほのかな甘みも感じるようになりました。

さすが手堅い無印良品ドリッパー。バランスが良い豆の複雑な味とコクを手軽な淹れ方で出してくれます

メッシュフィルターで中煎りのコーヒーを淹れる

では、同じ中煎りのインドネシア ガヨマウンテンをメッシュフィルターの63 COFFEEMAKERで淹れてみます。

一湯目はゆっくり細く注ぎます。二湯目は少し早めにして、三湯目以降は少々太めにサーッと注ぎます。メッシュフィルターにしては湯の抜けがゆっくりですが、それでもMUJI(メリタと同等)ドリッパーほどの「湯溜り」はできません。

味がスーッキリしていて、フローラルな香りが口の中に広がります。後味の酸味もなんとも心地良いです。苦味は極めてまろやか。バランスが良く、すべての要素がすごくスッキリまとまった感じです。その中でも主張してくるのが、フローラルな香り。

苦味も感じるのですが、「コレ、コーヒーだよね?」というくらいのまろやかさです。同じメッシュフィルターでも粗めのものは最後に粉っぽさが残るのですが、この非常に細かいフィルターではそれがありません。まったりとした香りが最後まで持続しました。

しばらくしたら別のメッシュフィルターも試しているかもしれません。その時はまたここで報告します。

まとめ:コクとスッキリの棲み分け

ペーパーでコク、メッシュでスッキリ、という結果は概ね予想通りでしたが、同じ豆がこれ程違う味になるとは思っていませんでした。と言うのも、上述のように今まではコクが特徴の豆はペーパーフィルター、スッキリした香りや酸味が特徴の豆はメッシュフィルター、という使い分けをしていたからです。

もちろんこの結果は、苦味とコク、香りや酸味から甘みまでバランスがいいインドネシア ガヨマウンテンという豆を使ってこその結果でしょう。他の豆ではどうなるか、楽しみが広がりそうです。前回も書きましたが、無限の可能性を秘めたコーヒーに「こだわり」は不要です

可能性を広げるもう一つの鍵は、お湯の注ぎ方ですね。

ドリップポットについて考える

今回メッシュフィルターで中煎りのコーヒーを淹れた時、スッキリさを意識して一湯目はゆっくり細く、二湯目以降はやや早め、太めにサーッと注ぐことを心掛けました。これが出来るのは注ぎ口が細いドリップポットならではですね。

今使っているドリップポットは大阪に住んでいた時に千日前道具屋筋商店街にあるNAKAO FACTORY WORKS & COFFEE STANDさんで買ったものです。

現在使用中のドリップポット
ステンレスの表面に処理を施してレトロなブリキ風に仕上げてあるところがお気に入りです。

ドリップポットを探していることを伝えると、いくつかのポットを並べて丁寧に説明していただけたことは今でも覚えています。

NAKAO Factory Works & Coffee Stand
NAKAO FACTORY WORKS & COFFEE STANDさんの店内にあるコーヒースタンド。カウンターの上に同じドリップポットが置いてあるのが分かりますか?

余談ですが初代ドリップポットはワケあって実家にとられてしまい(ハンドドリップ意外に使われていますが…)しばらくの間「注ぎ口の細いヤカン」を使っていました。その比較がこちら。

ドリップポットと注ぎ口の細いヤカン
なんだか「アダムの創造」のような構図ですが、注ぎ口の違いが分かると思います。口が細いだけではなく、首が「S字」になっていることも湯量を調整するうえで大事です。

ヤカンにしては口が細いのですが、それでもドリップポットのように湯量をコントロールするのは難しく、苦労してハンドドリップしていました。弘法筆を選ばず、とは言いますが、私のように弘法様のような腕前が無い人は素直に良い筆(道具)を選ぶことが賢明な選択でしょう

便宜上「ドリップポット」と書きましたが、これは直火にかけてお湯を沸かすので正しくは「ポット」ではなく「ケトル(ヤカン)」です。正攻法ではヤカンで沸かしたお湯をポットに移すことで熱湯を適度に冷まし、コーヒーを入れる適温にするのですが、面倒くさがりの私は「ドリップポット(ケトル)」でお湯を沸かして、少し時間をおいて冷ましてから淹れてしまいます。温度については別の機会にでもお話します。

次回以降もせっかくですので、違う豆と違うドリッパーを使ってペーパーフィルターとメッシュフィルターを比べてみます。

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