コーヒーを淹れる、と言うと「ハンドドリップってのは『の』の字を描くんだ」という話をよく聞きますが、何故でしょう?私はカフェに行くとよくハンドドリップするところを見せてもらいますが、「の」の字を描かないバリスタさんも結構います。百聞は一見にしかず、「の」の字を描くコーヒーと描かないコーヒーを比べてみました。

はじめに

味を比べるということで、ここではかなり良い条件でコーヒーを淹れています。けど、美味しいコーヒーを淹れるってそんなに大変なの?とは思わないでくださいね。私は自宅でこんな感じにコーヒーを淹れていますが、突っ込みどころもありますし、そんな淹れ方もあるんだ、って思ってもらえればいいです。

コーヒーを淹れるには最初の一湯の前の準備も大事ですので、これは前回の「十人十色のハンドドリップ:準備編」を参考にしてください。

コーヒーに少量のお湯を注いで蒸らす
準備編」ではドリッパーの中に入れたコーヒー粉にお湯を注いで蒸らすところまで説明しました。

またコーヒードリッパーにもいろんな種類があり、それぞれ特徴も違いますが、ここでは準備編でも使用したHARIO V60セラミックドリッパーを使います。

HARIO V60ドリッパー
円錐形で大きな1つ穴がHARIO V60の特徴です。

円錐形で内側にスパイラル状のリブがあり、真ん中に大きな一つ穴があるため、お湯の注ぎ方を変えれば抽出速度を変えられるのが特徴です。

中煎りの豆を使って、小さな円を描く

今回の主題は「の」の字を描く、描かない、ですが、もちろんコーヒーの味を語る時にそれ以上に重要なのは豆の種類です。ここでは中煎りのグアテマラを使います。コーヒー豆の精製は果肉を取り除いてから発酵させる「ウォッシュド」が一般的ですが、これは果肉が付いたまま乾燥させてから脱穀する「ナチュラル」製法で作られた豆で、フルーティーな香りが特徴です。

中煎りのグアテマラ
この日のために二日前に焙煎しておきました。自宅焙煎(ホームロースト)については別の機会にお話します。

グアテマラはコク、甘み、苦味のバランスが良く、これを「ザ・コーヒー」と呼ぶ人もいました(コーヒーは苦いイメージが強いかもしれませんが、甘み成分も含まれています)。中煎りですのでコクと酸味のバランスも良くなります。味を比べるにはちょうどいいかな、と思って選びました。焙煎して二日経った豆で、香りもいいです。

小さな円を描いて淹れたそのお味は、スッキリした程好い苦味がして、酸味はあまり感じませんでした。少し時間が経って温度が下がるとまろやかさが増し、ほのかな甘みも感じました。良い条件で淹れたので、ゆっくり飲んで冷めても味が悪くなりません。最後まで美味しく飲めました。

コーヒーの苦味成分は酸味よりゆっくり抽出されることを考えると、酸味より苦味を感じたのは「の」の字を描かなかったからではなく、湯を細くゆっくり注いからでしょうか?

中煎りの豆を使って、「の」の字を描く

次は同じ豆を「の」の字を描いて淹れてみます。

淹れたコーヒーをサーバーからカップに注いだ瞬間、さわやかな香りが漂いました。飲んでみると、いい感じの酸味がします。同じ豆でも淹れ方でここまで味が変わるとは、正直予想外でした。ナチュラル特有のフルーティーさも感じます。少し時間が経って温度が下がると、フルーティーさの中にほのかな甘みも感じるようになりました。さらに冷めると味にまろみが出て、最後まで美味しく飲めました。

じゃあ、やっぱり「の」の字を描く方がいいの?と思う前に豆を変えてみました。

深煎りの豆を使って、小さな円を描く

対照的かな、と思って選んだのは深煎りのマンデリンです。それぞれのコーヒー豆には適した焙煎度があると言いますが、中でもマンデリンは深煎りに向いた豆として知られています。苦味とコクが特徴です。前述のグアテマラと違い、こちらはウォッシュド製法です。

深煎りのマンデリン
中煎りの豆との色の違いが分かっていただけますか?グアテマラとマンデリンでは豆の大きさもかなり違います。

豆を挽く時にも中煎りと深煎りの違いを感じます。深煎りの豆はサラサラ挽ける感じです。これを小さな円を描きながら淹れてみます。

すいません、ちょっと配分を誤りました。ここまで鮮度がいい深煎りのコーヒーを淹れるのは久しぶりだったので、そのふくらみ方に見惚れている間に一湯目が少し多めになってしまいました。ま、そんなこともあります。お湯を注ぎ始めてから下に落ちる音がするまでタイムラグがあるのは、それだけコーヒー粉がお湯を吸いやすいということでしょう。

そしてその味は、一口飲んで「おぉ」と声が出るスッキリした苦味がしました。次の二口目には「ものすごい」コクを感じました。淹れ方の配分が予定外だったとは言え、深煎りでもスッキリした苦味とコクが好きならこの淹れ方もありでしょう。少し時間が経って温度が下がると、コクもとろっとした感じになります。このコクと苦味を愉しむなら冷めないうちに飲んだほうがいいでしょう。

深煎りの豆を使って、「の」の字を描く

ここまできたら深煎りの豆を「の」の字を描いて淹れる淹れ方も試してみました。

淹れ方で味は変わるんですねぇ。今度は苦味がガツンとくる感じでした。少し渋味もあります。時間が経って少し温度が下がっても苦味が持続します。コクより苦味が強い感じで、酸味はまったく感じられません。もう少し温度が下がると苦味に隠れていたコクが感じられるようになりました。バランスの良いコクと苦味を楽しむには冷めきる前に飲んだほうが良さそうです。

淹れ方をまとめると

結論を申しますと、どれが良いかは好みの違いでしょう。私個人の好みとしては、中煎りなら「の」の字、深煎りなら小さな円を描くのが好きです。強い苦味が好きな人は「の」の字を描いて淹れた深煎りもアリでしょうね。

そもそもHARIO V60はお湯の注ぎ方を変えることで好みの味を出せることが特徴ですので、今回はそれを実感する結果になりました。同じ「の」の字でも、素早く注げば味も変わるでしょう。準備編でも書きましたが、みんな違ってみんないい、十人十色のハンドドリップがあって良いと私は思っています。HARIO V60はそれを実現させてくれます。

V60透過ドリッパー01

セラミック 1-2杯用 ホワイト

メーカー

HARIO

定価

2,200円 (税込み、2024年5月時点)

ちなみに私はコーヒーを淹れる器具を部屋に飾るのも好きで、このセラミックドリッパーは実用的なインテリアとして映えます。とは言え、もっと軽くて扱いやすいものがいい、またはペーパーフィルターから染み出るコーヒーを見るのが好きなら樹脂製のドリッパーもいいでしょう。値段もお手頃です。

V60透過ドリッパー01

クリア 1-2杯用

メーカー

HARIO

定価

550円 (税込み、2024年5月時点)

フィルターはサイズが合うものを選びましょう。このブログでは基本的に「お一人様」サイズの器具を使っていますが、HARIO V60の場合は01は1~2杯用、02は1~4杯用ですので、同じ数字のフィルターを選んでください。

淹れ方についてさらに言えば、小さな円を描いて中煎りのコーヒーを上手く淹れるバリスタさんもいますので、これはやはり腕前の違いもあるでしょうか。まだまだ珈琲修行は続きそうです。その腕前ですが、「豆が良くなかったのさ」なんて言い訳をしないように、今回は条件の良い豆を用意しました。けど、そんな豆、いつでも手に入るわけではありませんよね。

コーヒー豆はどこで買う?

今回は淹れ方を比べるために2種類のコーヒー豆を使いました。私は時々生豆本舗さんから通販で生豆を買って自宅で手網を使って焙煎しています。上手く煎れた時の味は最高ですよ。けど、ちょっとハードルが高いと思われてしまうかもしれませんね。そこまでしなくても、例えば自家焙煎のカフェや、自家焙煎でなくても焙煎所から直接豆を仕入れているカフェでは結構良い豆を売っています。このブログはそもそも「カフェめぐり」ブログですので、そんなカフェも紹介していきたいと思っています。

The Otherside Coffee
大阪に住んでいた頃は西中島にある自家焙煎の店、The Otherside Coffeeさんでコーヒーのことをいろいろ教わって、コーヒー豆もよくここで買いました。浅煎り、中煎り、深煎りそれぞれ何種類かの豆から選べます。

私が自宅で今のようなコーヒーの淹れ方をするようになったのは仕事で大阪に住んでいた時でした。その頃は、こんな豆はあのカフェ、あんな豆はあの自家焙煎のカフェ、みたいにお気に入りの店がありました。その後名古屋に移り住んだ時には、どこでコーヒー豆を買えばいいんだ!となりましたが、あるところにはあります。

cafe Cereja
名古屋に戻ってすぐに見つけたcafe Cerejaさんは販売しているコーヒー豆の種類が豊富なだけではなく、スタッフさんのコーヒー豆知識も豊富で、いろいろ教わっています。

自宅で美味しいコーヒーを淹れるためにも、いろんなカフェでいろんなことを教わって、腕前を上げてみたいものです。私のカフェめぐりと珈琲修行は続きます。

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