猿田彦珈琲さんで買ってきたコーヒー豆をおうちで淹れてみました。お店ではペーパーフィルターで淹れた浅煎りのエチオピアを、その可能性を探るために2種類の異なるフィルターで淹れてみました。ペアリングはスコーンで。

浅煎りのエチオピアを買ってきた

前回紹介した猿田彦珈琲 名古屋則武新町店さんで浅煎りのエチオピアをハンドドリップでいただいた後、店内で販売されている同じ豆を買ってきました。詳しくは前回の記事を読んでみてください。

猿田彦珈琲独自のコーヒードリッパー
猿田彦珈琲さんは独自のドリッパーでコーヒーを淹れます。違うドリッパーにはそれぞれ特徴があり、豆の個性を違う方法で引き出します。

ナチュラル製法特有のフルーティーさがあるその豆は、後から分かったことですが、2021年にCup of Excellenceを受賞しています。

カップ・オブ・エクセレンス (COE) とは、各生産国で行われるコーヒー品評会のこと。数あるコーヒー品評会のなかでも、最も信頼のあるコンペティションといわれています。

最新版 珈琲完全バイブル「カップ・オブ・エクセレンス (COE)」(丸山健太郎監修、ナツメ社)

そんなコーヒーをショッピングモールでハンドドリップしていただけるなんて、ホントに貴重です!

猿田彦珈琲の浅煎りエチオピア
個性的なデザインのパッケージを開けると、浅煎りの爽やかな香りがフワッと漂ってきます。これを挽くとフルーティーな香りがさらに強く伝わってきます。

ちなみに、エチオピアはご存じのようにアフリカの国で、アフリカと言えば砂漠やサバンナを想像してしまいますが、エチオピアの国土の大部分は山岳地地帯です。その高地で育ったコーヒーは甘味と酸味、そしてフルーティーさが特徴です。

エチオピアと言えば、前々回紹介したR ART OF COFFEE 松坂屋店さんでいただいたのもエチオピアでした。この時は店内で浅煎りをいただき、深煎り豆を買っておうちでKINTOのメッシュフィルターで淹れてみました。詳しくは前々回の記事を読んでみてください。

エチオピアの深煎りと浅煎り
左はKiKi YOKOCHOのR ART OF COFFEEさんで買ってきた深煎り豆、右は猿田彦珈琲さんで買ってきた浅煎り豆。色の違いは一目瞭然です。浅煎りは、焙煎が進み一度目の膨張 (1ハゼ) が起きた後に煎り止めたもので、表面にはシワがあります。さらに煎り進めて二度目の膨張 (2ハゼ) が起こるまで焙煎したものが深煎りで、膨張により豆は膨らみ、シワも伸びます。

今回のお伴は、猿田彦珈琲さんと同じイオンモールNagoya Noritake Garden内のベーカリーで、アメリカ発祥のTHE CITY BAKERYさんで買ってきたスコーンです。違う淹れ方に合わせるように、2種類のスコーンを買ってきました。

メッシュフィルターで淹れてみた

まず選んだのはCoresのゴールドメッシュフィルターです。同じメッシュフィルターでもKINTOや、63 COFFEE MAKERの2重メッシュフィルターと違い目が大きく、湯の抜けが速いのが特徴です。

Coresの金属メッシュフィルター。メッシュの穴は縦型スリットタイプです。
Coresのゴールドメッシュにはいくつかのパターンがあり、これは縦型スリットタイプです。高温短時間抽出ができるのが特徴です。ご参考までに、このcoresメッシュフィルターの開発に協力した丸山健太郎氏は、上述のCOEの国際審査員を務めているそうです。

コーヒー豆に含まれる成分のうち、酸味は早く、苦みはゆっくり抽出されます。つまり抽出時間が短ければ苦味よりも酸味が強調されます。また、コーヒー豆に含まれる油分はペーパーフィルターを通過できませんが、メッシュフィルターは通り抜けるので、その味わいも変わります。

ここで紹介したカフェでは大名古屋ビルヂングのCHARLIE’Sさんや知多のOISEAU Coffeeさんが使用していますが、まだ少数派です。

coresのゴールドメッシュフィルターでハンドドリップ
CHARLIE’S 大名古屋ビルヂング店さんではシングルオリジンコーヒーを注文すると1杯用のCoresフィルターでハンドドリップしていただけます。

さて、このメッシュフィルターで浅煎りのエチオピアを淹れると、まずカップに注いだ時点で香りに甘味を感じます。口に含むと、スッキリしてまろやかな酸味には柑橘系の香りがしました。お店で同じ豆をペーパーフィルターで淹れていただいた時はベリー系の香りがしましたが、淹れ方が変わると香りも変わるのが分かります。

ペアリングしたのはTHE CITY BAKERYさんのミックスベリースコーンです。酸味と酸味を掛け合わせてみました。

THE CITY BAKERYのミックスベリースコーンと浅煎りのエチオピア
ランチョンマット、アカシアプレート、コースター、フォークは「おうち“MUJI”カフェ:ダーク&スイーツ編」でも登場した無印良品製。カップはネットで買ったKEYUCA製。背景にいるのはInstagramでも度々登場するペペロニアジェミニです。

スコーンは、さすがアメリカ発祥のベーカリーですね。私がカナダに住んでいた時によく食べたスコーンに似ています。日本のスコーンはビスケットに近いサックリ食感のものが多いですが、北米のスコーンの食感は「もそっ」としています。

その「もそっ」としたミックスベリースコーンの味は、良い意味で素朴な感じ。日本では多用されないクランベリーも懐かしい味です。このベリーたっぷりのスコーンは、Coresのメッシュフィルターで淹れたエチオピアの、さわやかな酸味があるスッキリした味わいと合います。酸味が強調されたエチオピアでしたが、少し温度が下がるとほのかな甘みも感じるようになりました。

本場英国ではスコーンと紅茶を合わせるイメージがありますが、浅煎りのコーヒーとも合うと思います(大阪のElmers Green Cafe Kitahamaさんに行った時も同じことを言っていました)。

セラミックフィルターで淹れてみた

今度は同じ豆をセラミックフィルターで淹れてみました。と、言っても、セラミックフィルターには馴染みがない人も多いでしょう。セラミックと言ってもペーパーフィルター用の陶器製ドリッパーとは違い、それ自体がフィルターです。この点はメッシュフィルターと同じです。

39Aritaのセラミックフィルター
私が使っているこの39Aritaの「セラフィルター」は、大阪に住んでいた時に難波の千日前道具屋筋にあるNAKAO FACTORY WORKS & COFFEE STANDさんで買いました。懐かしいです。

この39Aritaのセラフィルターでは緑茶や紅茶も淹れられるそうですが、私は専らコーヒー用に使用しています。尚、お茶や紅茶、またワインやウィスキーなどの酒類もこのフィルターを通すと味がまろやかになる、という話もありますが、未確認です。

コーヒーフィルターとしては、金属メッシュフィルターと同様にコーヒー豆に含まれる油分も通すので、ペーパーフィルターとは違う味わいになります。また湯の抜けはメッシュフィルターよりゆっくりですので、酸味と苦味のバランスが変わります。

セラミックフィルターの表面
セラミックフィルターの表面を拡大すると、砂粒を固めたような構造になっているのが分かります。この粒々の間を湯が通ることでコーヒーが抽出されます。

さて、このセラミックフィルターで浅煎りのエチオピアを淹れると、予想通り酸味は抑えられ、極めてまろやかになりました。それでもナチュラル製法特有のフルーティーさはしっかり残ります。さらに、浅煎りなのにボディ感が出てきました。

これに合わせたのは、同じくTHE CITY BAKERYさんのハニーレーズンのスコーンです。

THE CITY BAKERYのハニーレーズンスコーンと浅煎りのエチオピア
プレートは同じ無印良品のアカシアプレートですが、天然木ですので色や模様はひとつずつ違います。カップは以前紹介した常滑屋さんのギャラリーで買ってきたもの。背景は初登場で、最近育て始めたスパニッシュモスです。

このハニーレーズンのスコーンは、やはり軽さが好まれる日本風の焼き菓子と違う「ずっしり感」がありますね。ミックスベリーのような酸味はなく、レーズンの甘味が個性を与えます。思いのほかボディ感を得た浅煎りのエチオピアとの相性は期待以上でした。

セラミックフィルターで淹れたエチオピアは、温度が下がると少し甘味を感じるようになりました。鮮度が良い浅煎りの豆を丁寧にドリップすると、カップの中で起こるこんな「味変」も楽しめます。

まとめ:個性の活かし方もあなた次第

私は度々このブログで「コーヒーに『こだわり』はいらない」という話をします。コーヒーが好き、と言うとそれだけで「こだわりは?」と聞かれますが、コーヒーにこだわりを持っていたら、こんな風に浅煎りと深煎りをそれぞれ楽しんだり、同じ豆で違う淹れ方を楽しんだり、できませんですからね。

コーヒー豆も、焙煎具合も色々、淹れ方も様々。その個性の活かし方もあなた次第です。このブログがその活かし方の手助けになれたら嬉しいです。

猿田彦珈琲の基本情報

愛知県名古屋市西区則武新町3-1

10:00~21:00
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください

sarutahiko.co/shop
(猿田彦珈琲)

nagoya-noritake-garden.aeonmall.com/shop
(イオンモール Nagoya Noriake Garden)

猿田彦珈琲 名古屋則武新町店

THE CITY BAKERY 名古屋則武新町の基本情報

愛知県名古屋市西区則武新町3-1

7:30~21:00
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください

thecitybakery.jp/shop/nagoya
(THE CITY BAKERY)

nagoya-noritake-garden.aeonmall.com/shop
(イオンモール Nagoya Noritake Garden)

THE CITY BAKERY - NAGOYA

参考文献

いつもお世話になっているこれらの本を今回も参照しました。

最新版 珈琲完全マニュアル

コーヒーの淹れ方やコーヒー豆の説明はもちろん、上述のCOEについては見開き1ページ、フードペアリングにもかなりのページを割いています。

監修者

丸山健太郎

発行者

田村正隆

発行所

株式会社ナツメ社

発行日

初版発行:2021年6月2日

定価

1,760円 (税込み、2023年3月時点)

コーヒー「こつ」の科学

こつの「科学」と言っても、理系の人向けに書かれた本ではありません。理系科目に苦手な人も無理なく読める内容です。コーヒー豆を焙煎することにより起こる科学的変化や、コーヒー抽出の仕組みについても説明しています。

コーヒー「こつ」の科学

コーヒーを正しく知るために

著者

石脇智広

発行者

石丸兼一

発行所

株式会社柴田書店

発行日

初版発行:2008年9月10日
10刷発行:2019年7月10日

定価

1,980円 (税込、2023年3月時点)

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