ノリタケの森に隣接したショッピングモール、イオンモールNagoya Noritake Gardenにあるコーヒー専門店に行ってきました。猿田彦珈琲 名古屋則武新町店さん。普通ならショッピングモールでは期待できないクオリティの高いコーヒーを提供するお店です。
ノリタケの森に行ってきた
ノリタケの森はノリタケ本社敷地内に造られた複合施設で、この森と繋がっているのがイオンモールNagoya Noritake Gardenです。
2021年に開業したこのショッピングモールはTSUTAYA書店さんの映える本棚で有名ですが、残念ながらそこに併設されたカフェは作り置きでエグ味のあるコーヒーを出す大手シアトル系チェーン店です。普通ショッピングモールのカフェと言えば、そんなもんでしょう。

そんなショッピングモールで見つけてしまったのが、猿田彦珈琲さんです。
ひょっとしたら多くの買い物客にとっては、注文してからコーヒーが出てくるまで時間がかかるだけのお店に思えるかもしれません。けど、気付く人もいるでしょう、作り置きのコーヒーをジャーっと注ぐお店とのクオリティの違いに。

ドリップコーヒーはマシンで淹れるか、ハンドドリップで淹れるか選べて、どちらも使うドリッパーは同じです。初来店は混雑時だったこともあり、マシンを選びました。
マシンで淹れてもらった
猿田彦珈琲さんのマシンはハンドドリップと同じタイミングでお湯が注がれるようにプログラムされています。それでも注文を聞いてから1杯分の豆の挽く、サーバーは予め温めるなど、基本はコーヒー専門店と変わりません。

味は、いいですねぇ。そもそも豆がいいですし。人の回転が速いショッピングモールで美味しいコーヒーを提供するためには理に適った方法でしょう。
コーヒーは基本的にブラックで提供されます。砂糖やフレッシュも置いてありますが、これはコーヒー本来の味を楽しんでほしいという気持ちの現れでしょうか。
ハンドドリップしてもらった
せっかくなので混雑時を避けて再び来店し、今度はハンドドリップしてもらいました。選んだ豆は浅煎りのエチオピアです。
一般的なハンドドリップでは、最初に少しのお湯を注いで30~40秒ほど (焙煎度による) 蒸らした後、サーっと注ぐことが多いです。猿田彦珈琲さんでは始め複数回に分けてゆっくりお湯を注ぎ、その後でサーっと注ぎます。注いだお湯は落とし切らず、1杯分抽出された時点で湯溜りを残したままドリッパーをサーバーから外します。

そのお味は、一口目で優しいベリー系の酸味が口の中にフワッと広がります。苦味は極めてまろやかですね。このフルーティーさはナチュラル製法?と思ったら、後から分かったことですが、やはりナチュラルでした。
やっぱりこれは、ブラックで楽しんでほしい味わいです。あらためて、ショッピングモールでこんなコーヒーを楽しめるのは有難いです。

コーヒーは紙のカップで提供されますが、これは最近の傾向でしょうか。以前紹介したマルエイガレリアのThe Kitchen Wonderlandさんもそうでしたが、店内でいただく時はフタが必要かどうか聞いてくれます。必要ないプラスチック製品は使わない方がいいですからね。

お伴に選んだどら焼きは、生地は意外にもフワフワ食感。甘さも程良い。一口食べてから浅煎りのエチオピアを口に含むと、優しい酸味が強調される感じ。こんなペアリングもアリ、ですね。
店内では、モールの中のお店にしては珍しくクラッシックジャズが流れています。

ジャズを聴きながら、丁寧に淹れられたスペシャルティコーヒーを飲んでいると自分がどこにいるか忘れてしまいそうですが、そこは確かにショッピングモールの中。貴重な経験ですね。
豆の鮮度も良いのでしょう、冷めても美味しくいただきました。

気になったので、ハンドドリップしていただいたものと同じ浅煎りのエチオピアの豆を買って帰りました。お供には同じイオンモールNagoya Noritake Garden内にあるベーカリー、THE CITY BAKERYさんでスコーンを買って、このコーヒー豆を早速自宅で淹れてみました。
その様子は次回の記事を読んでみてください。
基本情報
愛知県名古屋市西区則武新町3-1
10:00~21:00
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください
(猿田彦珈琲)
nagoya-noritake-garden.aeonmall.com/shop
(イオンモール Nagoya Noriake Garden)

合わせて見たい
猿田彦珈琲さんで買ってきたCOE (Cup of Excellence) のエチオピアを自宅で淹れた時の様子を綴りました。
その後、東京に行った折に恵比寿にある本店に行ってきました。
猿田彦って… 誰?
店名の由来になっている猿田彦命 (猿田毘古神) は日本の神話に登場する神様です。下の写真は猿田彦珈琲さんに納められたお札で、左側の2つは三重の猿田彦神社のものだそうです。いい機会ですので、猿田彦命についてお話しましょう。まずは背景から。

その昔、この世は天上にある神様の国、「高天原」を天つ神が治め、この地上である「葦原中国」を国つ神が治めていました。因幡の白兎で知られた大国主命が葦原中国を平定した後、ひょんなことから国を天つ神に譲ることになります。そこで高天原から天下ったのは太陽神であり最高神である天照大御神の孫、邇邇芸命です (「天下り」は本来このような意味で使われます)。

邇邇芸命の一行が葦原中国に下る途中、上は高天原から下は葦原中国まで光り照らす者が現れました。一行は容易に近付けず、天照大御神は度胸がある天宇受売命に、その者が誰であるか尋ねさせました。すると答えて曰く、国つ神の猿田彦命であると。
猿田彦命は邇邇芸命が天下ると聞き、先導するために葦原中国からやって来たのでした。猿田彦命と、その名を名のらせた天宇受売命は後に夫婦になります。

この天宇受売命は、その前にも大事な役目を果たしていました。天の石屋戸の話はご存知でしょうか。天照大御神の弟、須佐之男命はあることをきっかけに高天原で大暴れしました。これに困った天照大御神は石屋戸に隠れますが、天照大御神は太陽神であるため、この世は真っ暗になってしまいます。
困った神々は相談して天照御大神をおびき出そうとして、その時、気を引くために岩屋戸の前で踊ったのが天宇受売命です。

猿田彦命と天宇受売命は一緒に邇邇芸命一行の道案内をしたことから、後の世では道祖神に姿を変えて旅人を見守ることになりました。道祖神が寄り添う男女二柱の神の姿をしているのはこのためです。
猿田彦神社
三重県伊勢市宇治浦田2-1-10
洲崎神社
愛知県名古屋市中区栄1-31-25
尚、石屋戸から天照大御神が出てきた後、須佐之男命は高天原から追放されました。下った先の出雲では八俣の大蛇を退治し、その体内から取り出した剣が天叢雲剣。これはやがて草薙剣に名を変え倭健命の佩刀となり、今は三種の神器の一つとして熱田神宮に納められています。これでお店に掲げられた御札がすべて繋がりましたね。
日本の古代史を読む
倭建命と草薙剣については以前白鳥庭園の茶寮、汐入や喜与女茶寮を紹介した時にも触れました。カフェめぐり、茶屋めぐりをしながら日本の神話に想いを馳せるのも、いいものです。
尚、上記の「ひょんなこと」や「あること」はすべて古事記や日本書紀に示されています。物語として読むと面白いですよ。
ここに紹介する本は私が学生時代に買って、今でも愛読書となっている古事記の全訳注本です。各章が原文の書き下し文、現代語訳と注釈、解説から構成され、専門知識がなくても無理なく読めます。