ノリタケの森に隣接したショッピングモール、イオンモールNagoya Noritake Gardenにあるコーヒー専門店に行ってきました。猿田彦珈琲 名古屋則武新町店さん。普通ならショッピングモールでは期待できないクオリティの高いコーヒーを提供するお店です。

ノリタケの森に行ってきた

ノリタケの森はノリタケ本社敷地内に造られた複合施設で、この森と繋がっているのがイオンモールNagoya Noritake Gardenです。

2021年に開業したこのショッピングモールはTSUTAYA書店さんの映える本棚で有名ですが、残念ながらそこに併設されたカフェは作り置きでエグ味のあるコーヒーを出す大手シアトル系チェーン店です。普通ショッピングモールのカフェと言えば、そんなもんでしょう。

イオンモールNagoya Noritake Gardenの蔦に覆われたオブジェと鯉のぼり
イオンモールNagoya Noritake Gardenの正面。蔦に覆われたモニュメントは、かつてこの地で陶器が焼かれていた時代のトンネル窯の跡、6本煙突のうち5本。この日は5月下旬でしたが、まだ鯉のぼりが元気に泳いでいました。

そんなショッピングモールで見つけてしまったのが、猿田彦珈琲さんです。

ひょっとしたら多くの買い物客にとっては、注文してからコーヒーが出てくるまで時間がかかるだけのお店に思えるかもしれません。けど、気付く人もいるでしょう、作り置きのコーヒーをジャーっと注ぐお店とのクオリティの違いに。

イオンモールNagoya Noritake Gardenの飲食店エリアにある猿田彦珈琲
猿田彦珈琲さんは1階の飲食エリア、Garden Marche内にあり、見た目は他の飲食店とほとんど変わりません、カウンターに並んだコーヒードリッパー以外は。

ドリップコーヒーはマシンで淹れるか、ハンドドリップで淹れるか選べて、どちらも使うドリッパーは同じです。初来店は混雑時だったこともあり、マシンを選びました。

マシンで淹れてもらった

猿田彦珈琲さんのマシンはハンドドリップと同じタイミングでお湯が注がれるようにプログラムされています。それでも注文を聞いてから1杯分の豆の挽く、サーバーは予め温めるなど、基本はコーヒー専門店と変わりません。

猿田彦珈琲のマシンでコーヒーを淹れる
自動化されているとは言え、お湯の注ぎ口は固定されているので、最初にコーヒー粉全体にお湯を行き渡らせる段階ではドリッパーを手で動かします。完全自動化された機械ではここでお湯がシャワー状に出るものもありますが、やはり少しでも人の手が入ると安心します。

味は、いいですねぇ。そもそも豆がいいですし。人の回転が速いショッピングモールで美味しいコーヒーを提供するためには理に適った方法でしょう。

コーヒーは基本的にブラックで提供されます。砂糖やフレッシュも置いてありますが、これはコーヒー本来の味を楽しんでほしいという気持ちの現れでしょうか。

ハンドドリップしてもらった

せっかくなので混雑時を避けて再び来店し、今度はハンドドリップしてもらいました。選んだ豆は浅煎りのエチオピアです。

一般的なハンドドリップでは、最初に少しのお湯を注いで30~40秒ほど (焙煎度による) 蒸らした後、サーっと注ぐことが多いです。猿田彦珈琲さんでは始め複数回に分けてゆっくりお湯を注ぎ、その後でサーっと注ぎます。注いだお湯は落とし切らず、1杯分抽出された時点で湯溜りを残したままドリッパーをサーバーから外します。

猿田彦珈琲でハンドドリップしてもらった
マシンは人のハンドドリップと同じタイミングでお湯を注ぐものなので、理論的にはハンドドリップと変わりません。実際、この写真に写っているように、ハンドドリップはストップウォッチで時間を計りながら同じタイミングで行います。けど、人に淹れてもらったコーヒーって、美味しいんですよ。

そのお味は、一口目で優しいベリー系の酸味が口の中にフワッと広がります。苦味は極めてまろやかですね。このフルーティーさはナチュラル製法?と思ったら、後から分かったことですが、やはりナチュラルでした。

やっぱりこれは、ブラックで楽しんでほしい味わいです。あらためて、ショッピングモールでこんなコーヒーを楽しめるのは有難いです。

猿田彦珈琲独自のコーヒードリッパー
猿田彦珈琲さんはドリッパーの形状も独特です。壁をなくしてペーパーフィルターが晒されていて、ガスの抜けが良くなります。このドリッパーが市販されていないのが残念。できることなら私のドリッパーコレクションに加えたいところです。

コーヒーは紙のカップで提供されますが、これは最近の傾向でしょうか。以前紹介したマルエイガレリアのThe Kitchen Wonderlandさんもそうでしたが、店内でいただく時はフタが必要かどうか聞いてくれます。必要ないプラスチック製品は使わない方がいいですからね。

紙カップに入れられた猿田彦珈琲のコーヒーと、どら焼き
浅煎りコーヒーに合うかな、と思いつつも、気になったどら焼きをお伴に選んでしまいました。

お伴に選んだどら焼きは、生地は意外にもフワフワ食感。甘さも程良い。一口食べてから浅煎りのエチオピアを口に含むと、優しい酸味が強調される感じ。こんなペアリングもアリ、ですね。

店内では、モールの中のお店にしては珍しくクラッシックジャズが流れています。

猿田彦珈琲の店内
店内は淡いグレーの壁に間接照明、ライトウッドのテーブルに淡いモスグリーンのチェアと淡色でまとめられ、落ち着く雰囲気です。

ジャズを聴きながら、丁寧に淹れられたスペシャルティコーヒーを飲んでいると自分がどこにいるか忘れてしまいそうですが、そこは確かにショッピングモールの中。貴重な経験ですね。

豆の鮮度も良いのでしょう、冷めても美味しくいただきました。

猿田彦珈琲の販売コーナー
店内ではコーヒー豆の他に、コーヒーを淹れる器具や焼き菓子も売られています。下の段、中央よりやや右側に並んでいるのが、今回いただいた浅煎りのエチオピアです。

気になったので、ハンドドリップしていただいたものと同じ浅煎りのエチオピアの豆を買って帰りました。お供には同じイオンモールNagoya Noritake Garden内にあるベーカリー、THE CITY BAKERYさんでスコーンを買って、このコーヒー豆を早速自宅で淹れてみました。

その様子は次回の記事を読んでみてください。

基本情報

愛知県名古屋市西区則武新町3-1

10:00~21:00
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください

sarutahiko.jp

(猿田彦珈琲)

nagoya-noritake-garden.aeonmall.com/shop

(イオンモール Nagoya Noriake Garden)

猿田彦珈琲 名古屋則武新町店

合わせて見たい

猿田彦珈琲さんで買ってきたCOE (Cup of Excellence) のエチオピアを自宅で淹れた時の様子を綴りました。

浅煎りのエチオピアを淹れてみた

浅煎りのエチオピアを淹れてみた|メッシュフィルター vs セラミックフィルター

COEを受賞したエチオピアの浅煎りを、ゴールドメッシュフィルターとセラミックフィルター、個性が大きく違うフィルターで淹れ比べました。


その後、東京に行った折に恵比寿にある本店に行ってきました。

猿田彦珈琲 恵比寿本店

猿田彦珈琲 恵比寿本店

有名店の本店は思いの外こぢんまりとして、期待以上に温かい街カフェでした。ダイレクトトレードのコーヒーにオリジナルのパンを合わせて。

猿田彦って… 誰?

店名の由来になっている猿田彦命 (猿田毘古神) は日本の神話に登場する神様です。下の写真は猿田彦珈琲さんに納められたお札で、左側の2つは三重の猿田彦神社のものだそうです。いい機会ですので、猿田彦命についてお話しましょう。まずは背景から。

猿田彦珈琲に納められたお札
向かって左側の2つのお札は三重の猿田彦神社のもの、真ん中は最高神である天照大御神のお札 (神宮大麻と呼ばれます)、右側は地元の熱田神宮のお札です。

その昔、この世は天上にある神様の国、「高天原たかまがはら」を天つ神が治め、この地上である「葦原中国あしはらのなかつくに」を国つ神が治めていました。因幡の白兎で知られた大国主命オオクニヌシノミコトが葦原中国を平定した後、ひょんなことから国を天つ神に譲ることになります。そこで高天原から天下ったのは太陽神であり最高神である天照大御神アマテラスオオミカミの孫、邇邇芸命ニニギノミコトです (「天下り」は本来このような意味で使われます)。

伊勢の猿田彦神社
伊勢の猿田彦神社。この写真は6年前に伊勢神宮を訪れたときに撮影したものです。外出制限も解除されたので、また訪れてみたいです。尚、猿田彦神社は伊勢神宮の宮社ではありませんが、内宮のすぐそばにあります。

邇邇芸命の一行が葦原中国に下る途中、上は高天原から下は葦原中国まで光り照らす者が現れました。一行は容易に近付けず、天照大御神は度胸がある天宇受売命アメノウズメノミコトに、その者が誰であるか尋ねさせました。すると答えて曰く、国つ神の猿田彦命であると。

猿田彦命は邇邇芸命が天下ると聞き、先導するために葦原中国からやって来たのでした。猿田彦命と、その名を名のらせた天宇受売命は後に夫婦になります。

名古屋市中区にある洲崎神社
名古屋で道祖神としての猿田彦命と天宇受売命を祀った神社が洲崎神社です。周りには住宅やオフィスが並びますが、この鎮守の森は別世界です。

この天宇受売命は、その前にも大事な役目を果たしていました。天の石屋戸の話はご存知でしょうか。天照大御神の弟、須佐之男命スサノオノミコトはあることをきっかけに高天原で大暴れしました。これに困った天照大御神は石屋戸に隠れますが、天照大御神は太陽神であるため、この世は真っ暗になってしまいます。

困った神々は相談して天照御大神をおびき出そうとして、その時、気を引くために岩屋戸の前で踊ったのが天宇受売命です。

洲崎神社内の道祖神
これは名古屋の洲崎神社の境内にある道祖神です。男女の姿ではありませんが、猿田彦命と天宇受賣命をまつっています。

猿田彦命と天宇受売命は一緒に邇邇芸命一行の道案内をしたことから、後の世では道祖神に姿を変えて旅人を見守ることになりました。道祖神が寄り添う男女二柱の神の姿をしているのはこのためです。

猿田彦神社

三重県伊勢市宇治浦田2-1-10

洲崎神社

愛知県名古屋市中区栄1-31-25

尚、石屋戸から天照大御神が出てきた後、須佐之男命は高天原から追放されました。下った先の出雲では八俣の大蛇を退治し、その体内から取り出した剣が天叢雲剣アメノムラクモノツルギ。これはやがて草薙剣クサナギノツルギに名を変え倭健命ヤマトタケルノミコトの佩刀となり、今は三種の神器の一つとして熱田神宮に納められています。これでお店に掲げられた御札がすべて繋がりましたね。

日本の古代史を読む

倭建命と草薙剣については以前白鳥庭園の茶寮、汐入喜与女茶寮を紹介した時にも触れました。カフェめぐり、茶屋めぐりをしながら日本の神話に想いを馳せるのも、いいものです。

尚、上記の「ひょんなこと」や「あること」はすべて古事記や日本書紀に示されています。物語として読むと面白いですよ。

ここに紹介する本は私が学生時代に買って、今でも愛読書となっている古事記の全訳注本です。各章が原文の書き下し文、現代語訳と注釈、解説から構成され、専門知識がなくても無理なく読めます。

著者

次田真幸

発行者

野間佐和子

発行所

講談社

発行日

1977年12月10日 第1刷発行

定価

968円 (税込み、2023年3月時点)

著者

次田真幸

発行者

野間佐和子

発行所

講談社

発行日

1980年12月10日 第1刷発行

定価

1,023円 (税込み、2023年3月時点)

著者

次田真幸

発行者

野間佐和子

発行所

講談社

発行日

1984年7月10日 第1刷発行

定価

1,056円 (税込み、2023年3月時点)

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