コーヒーが好きでカフェめぐりをして、自宅でもコーヒーを淹れる人は多いはず。私もその一人ですが、納得がいく一杯を淹れるのは今でも難しいです。そんな私が試行錯誤しながらコーヒーを淹れる様をこのカフェめぐりブログで綴っていきます。第一弾はハンドドリップの準備編です。

タイトルに「十人十色」と入れたように、コーヒーの淹れ方はこれが正しいんだ!という一つの方法は無いと考えています。みんな違ってみんないいコーヒーの淹れ方がある中で、迷いながら奮闘中の私の今のコーヒーの淹れ方をここで紹介していきますので、そんな淹れ方もあるんだ、と思ってくれたら嬉しいです。

ハンドドリップに必要な器具

今回の準備編では器具の紹介が多くなりますが、もちろん、自宅でこれらの器具を揃えなくてはいけないという意味ではありません。これから自分でコーヒーを淹れてみたいという人はまずドリッパーを一つ手に入れて、その他は必要に応じて少しずつ増やしてけばいいでしょう。現在独り暮らしの私は部屋にあるすべての物がお一人様用ですが、家族でコーヒーを飲む人などは適切なサイズの器具を選んでください。

上から順に、HARIO V60セラミックドリッパー、KINTOコーヒーサーバー300ml、HARIOドリップスケール

これからいろんな種類のドリッパーでコーヒーを淹れる方法を紹介しますが、この準備編で使うのはHARIO V60セラミックドリッパーです。他のドリッパーでも準備は基本的に同じです。

V60透過ドリッパー01

セラミック 1-2杯用 ホワイト

メーカー

HARIO

定価

2,200円 (税込み、2024年5月時点)

ドリッパーとサーバーはセットで買うのが基本ですが、どんなドリッパーにも合う好みのサーバーを用意するのもアリでしょう。私のお気に入りはミニマルなデザインのKINTO、SLOW COFFEE STYLEです。コーヒーは実用的なものではなく楽しむものですので、器具も趣味で選んでいいと思います。

KINTO SCS-S02

コーヒーサーバー 300ml

メーカー

KINTO

製品紹介

定価

1,210円 (税込み、2024年5月時点)

上の写真でサーバーを乗せているドリップスケールについては後で詳しく説明します。また、ドリップポットも大事な器具のひとつですが、これについては次回以降で詳しくお話しする予定です。続く「コーヒー豆を計る」で紹介するデジタルスケールも必須ではありませんが便利な器具です。

コーヒー豆を計る

コーヒー豆とお湯の比率は1:15から1:16が基本だと教わったことがあります。私もいろいろ試しましたが、最近は13gのコーヒー豆から1杯200ccのコーヒー(約1:15.4)を淹れることで落ち着きました。ただしこれは目安の一つで、好みの違いもありますし、私もそのうちまた違う淹れ方をしているかもしれません。

ご参考までに、上述のKINTOコーヒーサーバーのパッケージには「1杯分=粉10g/抽出量150mlが目安」と書かれており(フィルターの種類に言及はありません)、これは1:15になります。また今回使うHARIO V60のパッケージには「1杯分 (120ml) 10~12gが目安」と書かれていて、これは1:10から1:12になります。

murmur coffee kyoto
murmur coffee kyotoさんでは通常の1.5倍の豆を使って淹れる「丸福ブレンド」を美味しくいただきました。

一方、私が生豆を購入する生豆本舗さんのウェブサイト(「きまめ」ではなく「なままめ」と読みます)では次のように説明しています。

(1杯当たりの出来上がり湯量は120cc〜140ccとして)1杯分なら15g、4杯分なら40gという感じで、一度に淹れる量が増えるほど、1杯当たりの量を減らします。

生豆本舗ウェブサイト「美味しいコーヒーの淹れ方と保存方法」(https://www.namamame.jp/index.php?main_page=page&id=110)

これは約1:8~1:9.3となり、実際に入れてみると私にはちょっと濃かったです。とは言え、以前紹介した京都のmurmur coffee kyotoさんには通常の1.5倍の豆を使って淹れる「丸福ブレンド」なんてものもあり、美味しくいただきましたので、好みの違いがあってもいいと思います。もちろん生豆本舗さんも好みに合わせて豆の量を調整することを勧めています。

1杯分のコーヒー豆を計る
この撮影時にはたまたま13.00gになりましたが、ここまで厳密でなくても構いません。

私はコーヒー豆の量を計る時に、料理やその他いろんな用途に使えるデジタルスケールを使用しています。品名が大袈裟な、中国製のちょっと怪しい品ですが(取扱説明書の日本語がちょっと笑えます)重宝しています。このデジタルスケールと同じ(に見える)ものをドリップスケールとして使っているカフェもありました。ちなみに私はこのデジタルスケールを買った後で別にHARIOのドリップスケールを買いました。このドリップスケールについては後で少しお話します。

挽く前の豆の量を計量スプーンで計る場合は注意が必要です。コーヒー豆の大きさが違うと量が同じでも重さが変わることがあります。

同じ重さの浅煎り豆と深煎り豆
左は浅煎りのグアテマラ、右は深煎りのマンデリン。生豆の状態で豆の大きさも違いますし、浅煎りは豆が二度目の膨張をする「2ハゼ」が起こる前に煎り止めたもので、粒が小さいです。

計量スプーンは挽いた状態で売られているコーヒー粉の量を計る時には便利ですが、豆の量を計るときはデジタルスケールを使った方がいいでしょう。そして、コーヒー豆は豆の状態で買うことをおススメします。

コーヒー豆を挽く

挽いた状態で売られているコーヒー粉は手軽ですが、やはりコーヒーを美味しくいただくには豆のまま買ってきて挽き立てを淹れることをお勧めします。以前紹介した「コーヒー『こつ』の科学」にその理由が説明されています。焙煎豆に含まれる二酸化炭素には周囲の劣化要因からコーヒーを守る役割がありますが、この二酸化炭素は粉砕時に最大で70%程失われるそうです。つまりコーヒー豆を挽いた後はどんどん劣化していくということですね。

私が今使っているのは刃がセラミック製の小型(お一人様用?)コーヒーミル(コーヒーグラインダー)です。

小型コーヒーミルの外観とセラミック刃
外観は「スリムでスタイリッシュ」という評価と「冷たい」という意見に分かれますが、実用性を考えるとちょうど握りやすい大きさ(太さ)です。何より、セラミック刃の利点は揺らぎません。

セラミック刃の特徴として丈夫、金属と違って錆びず匂いも移らない、分解清掃が可能などが挙げられます。

コーヒーミルのセラミック刃を内側から見たところ
セラミック刃をコーヒー豆目線で見るとこうなります。自分はコーヒー豆に生まれてこなくて良かったと思います。

コーヒー豆の挽き方も大事ですので、これについてはまたの機会に詳しく説明します。

私が使っているものは少し古いのですが、今は改良版が売られています。

ドリッパーをセットする

さて、いよいよ冒頭の写真のようにサーバーの上にドリッパーを乗せてコーヒーを淹れる準備をします。コーヒーは適温を保つことが大事ですので(コーヒーを淹れる温度についても後々お話します)まずはサーバーをお湯で温めます。私はこの時ドリッパーも一緒に温めてしまいます

コーヒードリッパーをお湯で温める
温めたドリッパーを手で触るとその温度の違いを感じられます。

以前、訳あって冷たい状態になったドリッパーを使うことになった時、これではお湯の温度も下がってしまうと思ってドリッパーを温めてから淹れたところ、いつもより美味しく淹れられました。以来ドリッパーとサーバーを一緒に温めるようにしています。

次に、ペーパーフィルターの縫い目部分を折ってドリッパーにぴたっとセットして、このペーパーフィルターもお湯で濡らします。サーバーに入れたお湯はカップに移してカップも温めます

ドリッパーにセットしたフィルターをお湯で濡らす

この、ペーパーフィルターをお湯で濡らす手順はHARIOのウェブサイトで紹介している「V60の淹れ方」にもチラッと出てきますが、実践している人は少ないようです。私が今まで訪れたカフェでは大阪のThe Otherside Coffeeさんのバリスタさんがそうしていましたが、他ではまだ見たことがありません。

サーバーのお湯をカップに移したら、ペーパーフィルターの中に挽いたコーヒー粉を入れて平らにならします

コーヒーを蒸らす

次にコーヒー粉に少量のお湯を注いで蒸らします。

ここでお湯を細く注ぐには、注ぎ口が細いドリップポットが便利です。

以前紹介した「極める 愉しむ 珈琲辞典」には「湯は細く」という説明とともにお湯をポタポタと注ぐ写真が載せられていますが、実際はカフェでもサーッと注ぐところが多いようです。それでも共通しているのは真ん中から注ぎ始めて徐々に外側に広げ、それでもフィルターに直接お湯は注がないということでしょう。この状態で30秒ほどおきます。

コーヒーに少量のお湯を注いで蒸らす
鮮度が良い挽き立てのコーヒー粉にお湯を注ぐとプクーっと膨らんで気体がプクプクと出てきます。

この時のコーヒー粉の膨らみ方は焙煎度と豆の鮮度、また挽き方などにより変わります。上の写真で使用したのは焙煎してから2日経った中深煎りの豆です。この色でこの膨らみ方には見慣れていない人もいるかもしれませんね。

前述の「コーヒー『こつ』の科学」によると、このプクプクの正体は二酸化炭素だそうです。ざっくり説明すると、生豆を焙煎すると焙煎が進むにつれ二酸化炭素が生じるので、浅煎りよりも深煎りの方が二酸化炭素が多く含まれます。また焙煎豆に含まれる二酸化炭素は徐々に失われ、この時香りの成分も一緒に失われます。つまり浅煎りより深煎り、鮮度が悪いものより良いものが膨らみやすく、また鮮度が良く挽き立ての豆の方が香りが良くなります。

準備編はここまでで、これから先はいろんなドリッパーでいろんな淹れ方をしていきます。その前にドリップスケールについても説明しておきましょう。

ドリップスケールを使う

ドリップスケールを使う一番の利点は注いだお湯の量が分かることです。ただしこれはサーバーに入ったコーヒーの量を見れば大体分かることなので必須ではありません。もう一つの利点はお湯を注ぐ時間を計れることです。これも他で代用でき、例えば名古屋のカフェBRIGHT COFFEE STANDさんのマスターはドリップスケールを使わず、サーバーの隣にはストップウォッチを置いていました。

BRIGHT COFFEE STAND
ドリップスケールを使わず、ストップウォッチを見ながら丁寧にハンドドリップする名古屋のBRIGHT COFFEE STANDさんのマスター。

私はまだその域に達していないので、結構ドリップスケールに頼っています。やはり湯量と時間を一緒に測れるので助かります。コーヒー専門店でもドリップスケールを使わないところは多いのですが、一度使ってしまうと便利なので、私は毎回使っています。

ドリップスケールの表示部
ドリップスケールには注いだ湯量を測るはかりの他にストップウォッチの機能があります。

ドリップスケールはプロが使う道具、とは考えず、初心者を助けてくれる便利な道具と考えて自宅でも使うことをおススメします。

メーカー

HARIO

定価

7,700円 (税込み、2024年5月時点)

使う手順をざっくり説明すると、

  1. 電源を入れ、サーバーとドリッパーをスケールに乗せて、重さをリセットする
  2. コーヒー粉を入れて、重さをリセットする
  3. タイマーをスタートさせてお湯を注ぎ、30秒ほど蒸らす
  4. 重さをリセットして、お湯を注ぐ
  5. 杯数に関わらず3分を目安に抽出を終える

この手順はV60ドリップスケールの取扱説明書の記載を要約したものです。私が秘かに注目しているのは蒸らすためのお湯を注いでから重さをもう一度リセットすることです。この分のお湯は出来上がった1杯に含まれないわけですから、この時点でサーバーに落ちるのはごく少量であることが前提でしょう。コーヒー粉が十分蒸れる前は味がしっかり出ないわけですから、ここでお湯をサーッと注いでしまうと色はついても味が出ないコーヒーが出来上がってしまいます。ハンドドリップしたコーヒーが美味しいのは、このような微調整ができるからでしょう。

Blue Bottle Coffee 神戸カフェ
神戸のBlue Bottle Coffeeさんのカウンターにはドリップスケールがずらっと並んでいてインテリアに溶け込んでいました。

最後に

準備編ですでに長々と書いてしまいましたが、これはあくまで一例ですので、これを参考にしながら自分のスタイルを見つけてもらえたら嬉しいです。私自身試行錯誤中ですので、ひょっとしたらいつの間にか違う淹れ方をしているかもしれません。

次回以降でいよいよハンドドリップの仕方を説明していきます。

今回は触れなかったドリップポットなどについても後々説明します。

参考文献

この「十人十色のハンドドリップ:準備編」では私の本棚にある以下の本を参照しています。

コーヒー「こつ」の科学

こつの「科学」と言っても、理系の人向けに書かれた本ではありません。理系科目に苦手な人も無理なく読める内容です。コーヒー豆を焙煎することにより起こる科学的変化や、コーヒー抽出の仕組みについても説明しています。

コーヒー「こつ」の科学

コーヒーを正しく知るために

著者

石脇智広

発行者

石丸兼一

発行所

株式会社柴田書店

発行日

初版発行:2008年9月10日
10刷発行:2019年7月10日

定価

1,980円 (税込、2023年3月時点)

極める 愉しむ 珈琲事典

コーヒーの淹れ方とその背景知識について説明した本の中でもこの「極める 愉しむ 珈琲事典」はかなり濃い内容です。

極める 愉しむ 珈琲事典

THE COMPLETE GUIDE TO COFFEE

編者

西東社編集部

発行者

若松和紀

発行所

株式会社西東社

発行日

2017年12月7日

定価

1,650円 (税込み、2023年3月時点)

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