最近はHARIOやKÔNOなどの円錐型ドリッパーがすっかりメジャーになりましたが、私が自分でコーヒーを淹れるようになった頃はまだ主流だったKalitaの3つ穴ドリッパーが、今でも好きです。そんなKalitaで、違う豆を飲み比べてみました。
ひょっとしたらカリタのドリッパーに馴染みがない人もいるかもしれませんので、少し説明しておきましょう。
カリタの3つ穴ドリッパーって?
前回紹介した、メリタのようなMUJIドリッパーは台形で、底に小さな穴が1つ開いています。カリタのドリッパーも台形ですが、底には小さな穴が3つあります。ですから、メリタやMUJIよりの早くお湯が抜けますが、HARIOやKÔNOほどサーッとは抜けません。

カリタの3つ穴ドリッパーと言って思い出すのは、Japan Coffee Festivalでお会いしたHealing Coffee Metheonさんです。3つ穴ドリッパーを使う唯一の出店者でした。

最近は「カリタ」と言えば「ウェーブシリーズ」を連想する人が多いかもしれませんね。このドリッパーの穴の数も3つですが一般には「カリタウェーブ」と呼ばれ、「3つ穴」と言えば昔からある台形ドリッパーを指すことが多いです。

このカリタウェーブも別の機会に紹介しますが、今回の主役は台形の3つ穴ドリッパーです。
私が自分でコーヒーを淹れるようになった二十世紀(…大袈裟ですね。90年代後半です)からずっと使っているのは陶器製の1~2人用ドリッパーです。2杯分を淹れるには少し小さいので、実質お一人様用です。
けど、訳あってこれが今手元にないんです… 3つ穴で入れたコクのある深煎りが飲めないのは淋しい。けど元のドリッパーが手元に戻った時に同じものが2つあっても仕方ない。と言うことで、最近買ってしまいました、銅製の3つ穴ドリッパーを。
「準備編」で紹介したKINTOのサーバーを買ったのはこの銅製ドリッパーを買う前でした。実はその頃から銅製3つ穴ドリッパーを買うことを考えていたので、それに似合いそうなものを探して見つけたのがKINTOのサーバーでした。

コーヒーは趣味で淹れるものですから(健康効果はあるようですが、薬かサプリメントとして飲むわけではないので)器具選びに遊び心があってもいいと思います。
では、このカリタの3つ穴ドリッパーを使って浅煎り、中煎り、深煎りそれぞれの豆を使ってコーヒーを淹れてみます。準備の手順は「十人十色のハンドドリップ:準備編」を参考にしてください。

3つ穴ドリッパーで浅煎りコーヒーを淹れる
今回浅煎りに選んだ豆はブラジル トミオ・フクダ・ブルボンアマレーロです。日系二世のトミオ・フクダさんの農場で栽培されたコーヒーとのことで、甘みと酸味が特徴のナチュラル製法の豆です。

その淹れ方なのですが、
私が自分でコーヒーを淹れるようになった頃に、それをどう習ったのか今では覚えていないのですが、お湯を注ぎ足さずに一度に注ぐ「メリタ式」のような方法に落ち着いています。「カリタ式」は、少なくとも複数杯のコーヒーを淹れる場合は数回に分けて注ぎ足すのが正統のようですが、すいません、淹れ慣れた方法でさせていただきます。
少し早めに「の」の字を描きながら、1杯分のお湯を一度に注ぎ終えた時点でちょうどドリッパーに目一杯の湯溜りができるくらいにしてみました。
そのお味は、最初の一口で香りが口の中に広がり、心地よい酸味の後味が残ります。まろやかな酸味と香りのバランスが絶妙です。浅煎りですので色は少し濃い目の紅茶くらいですが、香りは100%コーヒー。
温度が少し下がってカップの中で「味変」が起こると、香りの中に浅煎り特有の甘みを感じるようになります。ベリー系のフルーティーさが徐々に主張し始めます。
実は私は繊細な味の浅煎りコーヒーを上手く淹れる自信がまだないのですが、浅煎りの良さをこんな手軽な方法で淹れられるのはドリッパーの力でもあるでしょう。その美味しさにため息をつくと、そのため息の中に浅煎り特有の良い香りを感じます。冷めてもなおこの香りが持続しました。
3つ穴ドリッパーで中煎りコーヒーを淹れる
中煎りに選んだ豆はインドネシア ガヨマウンテンという豆です。初めて聞く名前だったのですが、甘みと酸味のバランスが良く、甘みやコクもあるとのことで「抜擢」しました。

今度は浅煎りの時より少しゆっくりめに、小ぶりな「の」の字を描いて淹れてみます。やはり注ぎ足さずにお湯を一度に注いでみました。
スッキリした軽い苦味があって、酸味が余韻を残します。その程好い苦味の中に、しっかり香りも感じます。苦味と香り、そして後味に残るまろやかな酸味のバランスが最高です。
浅煎りほど顕著ではありませんが、温度変化に伴う味変も感じられます。少し温度が少し下がると苦味がさらにまろやかになり、香りの余韻が続くようになります。実は豆を挽いた時点でその香りが超絶で、その香りを活かすドリップができたようです。もう香りを後付けしたフレーバーコーヒーは要りません。冷めてもなお香りが持続します。
3つ穴ドリッパーで深煎りコーヒーを淹れる
深煎りで好きな豆は、やっぱりマンデリンです。今だから言ってしまいますと、以前「『の』の字を描く、描かない」の時に使った豆はちょっと煎り方が深過ぎました。ホームローストではそんなこともあります。今回はちょうどいい感じに焙煎できたと思います。

今度はさらに注ぎ方をゆっくりにして、小さな円を描いて淹れてみました。鮮度のいい深煎り豆はお湯をよく吸ってぷっくり膨らむので、注ぎ方が早過ぎるとすごいことになってしまいます。
すっきりした苦味がいいですね。渋味はまったくなく、苦味の中に香りを感じます。そして、まろやかなコクがたまりません。かなりしっかりした苦味なのですが、香りが良いので上品な味になっています。少し温度が下がると今度はコクが前面に出てきます。苦味、香り、コクのバランスがいい上品な深煎りに仕上がりました。
今でこそ浅煎りから深煎りまで楽しむ私ですが、二十世紀以来ずっと深煎りばかり好んで飲んでいた時期が長く、浅煎りの良さに気付いたのはほんの数年前のことです。それ以前は「コーヒー = 3つ穴ドリッパー × (苦味+コク)」という図式が出来上がっていたのですが、ある意味でそんな私の原点に回帰する1杯でした。
まとめ:すっきりからコクまで、そつなくこなすドリッパー
上述のように私にとっての3つ穴ドリッパーは深煎りのコクを出すものという印象があったのですが、もちろん、実はオールマイティーなドリッパーです。HARIOやKÔNOの円錐型ドリッパーのようにお湯の抜けを調整することはできないかもしれませんが、注ぎ方を微調整すれば浅煎りの良さも深煎りの良さも引き出します。やっぱりカリタが好き、です。
とは言え、主役の座を円錐型ドリッパーに奪われたことは確かなようです。たまにカリタの3つ穴ドリッパーを使うカフェを見つけると嬉しくなってしまいます。

今回は贅沢に銅製のドリッパーを使いましたが、私のようにドリッパーを部屋に飾る趣味がなければ、陶器製や、もっと気軽に使える樹脂製の3つ穴ドリッパーでもいいでしょう。
当然のことですが、ペーパーフィルターは形とサイズが合ったものを選んでください。上述のように今の主流は円錐型ドリッパーですので、間違えないでくださいね。カリタであれば「101」は1~2人用、「102」は2~4人用ですので、ドリッパーに書いてある数字と同じものを選んでください。
最後に:コーヒーに「こだわり」って必要?
私がコーヒーの話をすると「こだわりがあるんだぁ」とよく言われますが、私はむしろコーヒーにこだわりは不要だと考えています。今回は「Kalitaが好き」というテーマでカリタの3つ穴ドリッパーを使いましたが、別に3つ穴にこだわっているワケではありません。「好き」と「こだわり」は全く別の概念です。
「こだわり」は可能性の幅を狭めるものだと私は考えています。前述のHealing Coffee Metheonさんとの出会いはJapan Coffee Festivalでしたが、ここでは出展者が各々個性的なコーヒーを淹れます。このイベントに「こだわり」を持って挑んだら、コーヒーと、そのコーヒーを淹れる人と出会う機会も狭められてしまうでしょう。

こだわりを持たずにコーヒーの可能性を探れば、自分の好きなコーヒーが見つかる。私はそう思います。
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