バターを活かした焼き菓子を作るお店が、その焼き菓子に合うコーヒーを淹れる自家焙煎のカフェを開きました。Butteryさんの名駅桜通店。オフィス街でスペシャルティコーヒーを嗜む、贅沢なお店です。

地下街から桜通に出てみたら

初めて行くお店なのでGoogleマップで場所を確かめ、名駅地下街「ユニモール」の14番出口を目指して行きました。地上に出ると、出口が間違っていないことがすぐに分かりましたね。焙煎されたコーヒーの香りが通りまで漂っていましたから。

お店に着いた時はちょうど焙煎が終わったところでした。

Buttery名駅桜通店の焙煎機
こちらがその香りの正体、熱風式の自動焙煎機。後ろに見えるのはユニモールの出口。

以前紹介した栄のcafe Cerejaさんのように、それぞれの豆に合った最適の焙煎度合いがプログラミングされています。ここでは店長さんが自らプログラミングするそうです。

実は店長さんとは、姉妹ブログ「SweetsオトコのCafeめぐり」で紹介したButtery Cafeさんでお会いしていました。店長を兼ねる姉妹店での再会となります。

Buttery名駅桜通店のブレンドコーヒー
Buttery本店を訪れた時、桜通店ではスペシャルティコーヒーをハンドドリップするので是非、とのことでしたので早速伺いました。こちらの店舗ではコーヒーに力を入れていることが分かります。「Seasonal Brend (Blend)」は「季節のブレンド」ですね。

先日訪れた、バターの焼き菓子がメインのButtery Cafeさんはオフホワイトを基調にした柔らかな雰囲気でしたが、こちらオフィス街にある桜通店はライトグレーを取り入れたクールな印象です。

Buttery名駅桜通店の店内
レンガやモルタルの壁に、テーブルや椅子はダークウッド。ロゴは同じでも本店とは違う雰囲気を醸し出しています。よく見ると椅子のデザインは本店と同じなのですが、色が違うと印象が随分変わります。

スイーツ男子オトコの私はバターにこだわったスイーツにも興味がありますが、この日のお目当ては、もちろんコーヒーです。コーヒー馬鹿でもありますから。

前日に本店でいただいたのは「季節のブレンド」で、この時は特徴的な軽い香りの正体がブレンドに含まれるタイ産の豆ではないか、と想像していました。ここではそのタイのコーヒーをシングルでいただけます。

Buttery桜通店の焙煎豆
自家焙煎のお店ですからね、新鮮な豆が並び、それぞれの味の特徴もうまく説明されています。手前の左から2番目はエチオピア産のゲイシャ。この写真からは判別が難しいですがチャートの上側の値が「香り」で、この豆は香りがずば抜けて高いことが分かります。

選んだのはそのタイと、バターをふんだんに使ったクイニーアマン。それと、コーヒーの良さを知ってもらうためにエチオピアのゲイシャも試飲させていただけるとのことでしたので、遠慮なくいただくことにしました。コーヒーの良さは、もちろん知っていますが(笑)。

エチオピア ゲイシャ

前述のようにここはオフィス街。休日はもちろん平日も、テイクアウトのコーヒーをちょこっと買いに来る人もいるようです。でも店内で落ち着いてコーヒーを飲める時間がある人に、色んなコーヒーがあるって知ってもらえたらいいですよね。エチオピア ゲイシャの試飲はそんな方にピッタリです。

Buttery名駅桜通店でスペシャルティコーヒーをハンドドリップ
違うスタッフさんが淹れてもバラツキが出ないよう、味が安定しやすいカリタウェーブで淹れています。それでも抽出する量とタイミングはドリップスケールでしっかり計っています。

さて、そのお味は。ゲイシャらしいフローラルな香りに、どこかフルーティーさもある。「苦味より香り」のゲイシャの良さが出ています。試飲用の小さなカップでいただきましたが、ゆっくり飲んでいればきっと甘味も感じるようになるのでしょう。

Buttery名駅桜通店のコーヒーとクイニーアマン
手前の小さなカップに入ったのがエチオピア ゲイシャ。このKINTOのガラス製カップは栄のBASE COFFEEさんの飲み比べでも見覚えがありますね。

エチオピアのゲシャ産のゲイシャという品種については以前「浅煎りのゲイシャを淹れてみた」で少し紹介していますので、興味のある方は読んでみてください。

「ゲイシャという品種」とサラッと書きましたが、種と品種についてはチムニー珈琲焙煎さんを紹介した時に少し説明しています。こちらも興味があれば読んでみてください。

タイ チェンライ ドイパンゴンとクイニーアマン

さて、気になっていたタイのコーヒー。名前は長いですが、チェンライ県のドイパンゴン地区が産地です。

こちらも香りが特徴的だけど、ゲイシャのフローラルさとは明らかに違う。説明するのが難しいのですが、テイスティングノートにある「ウイスキーのような」は言い得ています。もちろん、ウイスキーで実際に後から味付けしたフレーバーコーヒーではなく、自然な香りのコーヒーです。コーヒーは収穫後の精製方法や焙煎方法の違いで風味が大きく変わります。

エチオピアのゲイシャも香りが特徴的でしたが、こうして飲み比べると個性の違いが際立ちますね。

Buttery名駅桜通店の店内、コーヒーとクイニーアマン
Buttery本店でも使われているORIGAMI製の、ちょっと大きめのカップ。この形はコーヒーの香りをより良く感じるように工夫されているそうです。

大きめのカップに入ったコーヒーをゆっくり楽しんでいると、甘味も感じられるようになりました。コーヒーは苦い飲み物、と思っている人に知ってもらいたいコーヒーです。

そして、クイニーアマン。普段見慣れているクイニーアマンはあんぱんサイズですが、随分小ぶりです。こちらはバターをたっぷり使っているので、あんぱんサイズだとちょっと重たくなるとのこと。

Buttery名駅桜通店のクイニーアマン
ホットケーキやワッフルのように「お食事」にもなるスイーツと違い、コーヒーのお伴にちょうどいいサイズのプレーンクイニーアマン。

口に入れると、「これぞバターのスイーツ」というバター感。甘さはもちろん、軽い塩味も効いて、文字通りいい塩梅です。ブリオッシュ生地とのことですが、それがクイニーアマンになると個性的なモチサク食感になります。これが、口の中でコーヒーと溶け合う。コーヒーとバターのスイーツとの相性を改めて感じます。

こんなお店がオフィスの近くにある人って、羨ましいです。3月から開店時間が8:30になったそうですので、9時始業の方は仕事前にも寄れますね。

Buttery名駅桜通店の店内から見た桜通
大きな窓の外には桜通沿いのオフィスビル

先日姉妹ブログで紹介した本店のButtery Cafeさんでも上述のようにORIGAMI製のカップを使っていて、これは岐阜の陶磁器です。使っていたカトラリーはNoritake製で、ノリタケの森は本店から数百メートルの距離です。

ひょっとして地域との繋がり? と思って訊ねるとそれだけではなく、ここ名駅桜通店に飾られた絵画は地元と縁があるアーティスト、ハシヅメユウヤさんの作品だそうです。

Buttery名駅桜通店に飾られたハシヅメユウヤさんの作品
Butteryのイメージに合うように描いていただいた作品とのこと。無機質なモルタルの壁にこの絵が飾られただけで、お店の雰囲気が変わりますよね。

アート作品を眺めながらコーヒーを嗜む、と言えば大津通沿いのQ.O.L. COFFEEさんを思い出します。

と、そんなこんなでゆっくり過ごしましたが、鮮度のいい豆で淹れたコーヒーは冷めても嫌味が出ません。温度が下がって香りは変わっても、個性派失われない。最後まで楽しみました。

Buttery名駅桜通店で売られているコーヒーパック

スイーツ男子オトコでコーヒー馬鹿の私にピッタリのお店。また来ます。

この後、この場所「桜通り」とタイについて、少しお話します。

基本情報

愛知県名古屋市中村区名駅3-21-7

8:30~19:00
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください

Buttery 名駅桜通店

合わせて見たい:Buttery Cafe

前述のように、店長さんにお会いしたのは本店に併設されたButtery Cafeさん。姉妹ブログ「SweetsオトコのCafeめぐり」で紹介しています。

Buttery Cafe

Buttery Cafe

その名の通りバターにこだわったスイーツのカフェ。洗練された店内で、奇を衒うことなく素材の味を活かしたスイーツにコーヒーを合わせていただきます。

桜通って、桜の名所??

ちょっと違います。

かつて名古屋城の城下町だった丸の内地区にある「桜天神社」が桜通の名前の由来です。かつてこの通りは「桜ノ町筋」と呼ばれ、天神社の境内には桜の大樹があったそうですが、大火で焼失してしまったそうです。

余談ですが、先ほど「大津通沿い」と書いたQ.O.L. COFFEEさんがあるのは大津通と外堀通りが交わる交差点。この外堀の内側が名古屋城の三之丸で、かつて武家屋敷があった地域です。その外側は商人や職人が多く集まる城下町の「丸の内」で、桜天神社の横を通り栄を抜け大須まで貫く「本町通」はその目抜き通りでした。

カフェの店名から歴史を紐解くって、面白くないですか?

参考文献

監修者

名古屋城調査研究センター

発行者

矢部敬一

発行所

創元社

発行日

第一版第一刷発行:2022年10月20日

定価

1,650円(定価、2024年6月時点)

タイのコーヒー生産

タイは北緯25度から南緯25度までの「コーヒーベルト」と呼ばれる地域にあり、アジアでは主要なコーヒー生産国のひとつです。生産される豆の多くは主に缶コーヒーやインスタントコーヒーに使われるロブスタ種(正しくは品種)で、カフェなどで使われるアラビカ種は日本ではまだあまり流通していません。

アラビカとロブスタについてはチムニー珈琲焙煎さんの紹介で少し説明していますので、気になる方は見てみてください。

今回いただいたコーヒーの産地であるチェンライ県は、同じくコーヒー生産国であるミャンマーとラオスと国境を接しています。この地域はかつて、アヘンの原料としてのケシが栽培されるゴールデン・トライアングルと呼ばれる地域でした。「ゴールデン」とは言え実際は、収入源になるはずのアヘンが逆に貧困を生む原因になっていたとのことです。

実はケシとコーヒーの栽培環境は似ているそうです。そこに目を付け、栽培作物をケシからコーヒーノキに代えることで貧困を断ち切ろうと考えた人達がいました。プミポン国王という名前に聞き覚えのある人はいませんか。その母親である、「メーファールアン」ことシーナカリン王太后がケシ栽培をやめさせる活動を始め、子息であるプミポン国王がその遺志を継ぎ、ケシからコーヒーノキなどの作物に転作させるプロジェクトを推進しました。

what’s!? coffeeのコーヒーカップに添えられた生産者の説明
こちらは以前SOCIAL TOWER MARKETに出店したwhat’s!? coffeeさんでいただいたコーヒー。同じチェンライ ドイパンゴン産の豆で、生産者のことが詳しく述べられています。

自分が飲む1杯のコーヒーが、生産者が貧困から抜け出す手助けになると思ったら、ちょっと気分が良くなりませんか? 大袈裟に聞こえるかもしれませんが、1杯のコーヒーにはそんなストーリーも含まれているんです。

合わせて見たい:世界フェアトレード・デー・なごや

コーヒー好きが集まるイベントで、前述のミャンマーとラオスからコーヒー豆を仕入れる団体の方々からも話を聞いてきました。

コーヒーサミット @ 第14回 世界フェアトレード・デー・なごや

コーヒーサミット @ 第14回 世界フェアトレード・デー・なごや

名古屋で開催される恒例のイベントに行ってきました。コーヒーサミットに参加した28団体の中から「若い力」と「エシカル」に焦点を当てて紹介します。

参考文献

最近流行り言葉の「SDGs」にはすっかり「エコ」という意味が定着してしまっていますが、実際はそんな薄っぺらいものではなく、持続可能な「開発」の目標です。そこにはコーヒー農家のような農村の開発も含まれますが、エコは関係ありません。

著者

Jose. 川島良彰

池本幸生 山下加夏

発行者

千葉均

発行所

株式会社ポプラ社

発行日

初版発行:2023年2月6日

定価

1,078円(税込み、2023年5月時点)

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