技術の進化は、分野によってそのスピードは異なりますが、続くものです。コーヒーの世界もしかり。精製されたコーヒー豆を焙煎して、挽いて淹れるという基本は変わらずとも、そのトレンドは少しずつ変わっていきます。「最新版 珈琲完全バイブル」は変わらない基本から最新情報まで広くカバーしています。
どんな本屋さんにもコーヒーに関する本は何冊か並んでいますが、この「最新版 珈琲完全バイブル」は以前紹介した「極める 愉しむ 珈琲辞典」と並び、コーヒーの初心者からワンランク上を目指す人まで、幅広い人が楽しめる内容になっています。おうち時間を楽しみたい今、「おうちカフェ」を充実させたい人にもおススメです。
「最新版 珈琲完全バイブル」の概要
コーヒー最新トレンド&トピックス
「最新版」を冠するこの本の冒頭で、今ならではの「IoT化」したコーヒーメーカーやインターネットの活用から、今注目されている新しいコーヒー豆の精製方法などを紹介しています。
Chapter 1 美味しいコーヒーを飲もう!
普段は気にする機会が少ないコーヒーノキの栽培から出荷までの工程を含む、一杯のコーヒーができるまでの全工程の概説に始まり、私たちが普段自宅でコーヒーを飲むまでの過程 – コーヒー豆を買う、挽く、淹れる – を丁寧に説明しています。
- Section 1 コーヒー豆を買う
- Section 2 コーヒー豆を挽く
- Section 3 コーヒーを淹れる
- Section 4 コーヒーの名脇役たち
中でも一番多くページ数を割いているのが「Section 3 コーヒーを淹れる」で、以下の抽出方法を詳しく説明しています。
- ペーパードリップ
- フレンチプレス
- ネルドリップ
- 金属フィルター
- サイフォン
- エアロプレス
- エスプレッソマシン
- マキネッタ
- アイスコーヒー

ペーパードリップはさらに細かく、以下の器具で淹れる方法を解説しています。
- カリタウェーブ
- メリタ
- HARIO
- コーノ
- ORIGAMI
- ケメックス
それぞれのドリッパーの説明で、杯数毎のお湯の量とコーヒー豆の量や適度な湯温、また各段階の時間まで、かなり詳細に説明しています。
コーヒーを上手く淹れられるようになりたい!と思う人の多くが気になるのはここではないでしょうか。実際私も参照しています。
Chapter 2 もっと知りたいコーヒー豆のこと
コーヒーチェリーを実に付けるコーヒーノキと、収穫したコーヒーチェリーが生豆になるまでの説明から始まり、コーヒーの主な生産地とそこで生産されるコーヒー豆の特徴を詳しく説明し、近頃話題になるものの定義が曖昧なスペシャルティコーヒーも詳述します。
- Section 1 「コーヒーノキ」と「コーヒー豆」
- Section 2 コーヒーの栽培と出荷まで
- Section 3 コーヒーの生産地
- Section 4 スペシャルティコーヒー入門
私は「コーヒーが好き」と言うと、「こだわりは何ですか?」とよく聞かれます。でも、なぜコーヒーに「こだわり」を持たなくてはいけないのでしょうか。こんなに色んなコーヒーがあるのに、こだわりの豆しか選ばないのはもったいないです。
コーヒーも、みんなちがって、みんないい。
この章は、個性的なコーヒーの中から楽しみの幅を広げる手助けになるでしょう。
Chapter 3 さまざまなコーヒーを楽しむ
男は黙ってブラックコーヒー、もいいですが、アレンジコーヒーもコーヒーの楽しみ方の一つですし、ラテアートは文化と言ってもいいでしょう。そんなコーヒーの楽しみ方を紹介しています。
- Section 1 定番&個性派アレンジコーヒー
- Section 2 エスプレッソのアレンジ
コーヒーの中には砂糖やミルクで味を誤魔化さないと飲めないような不味いものもありますが、それは論外です。美味しいコーヒーは、アレンジすることで別の飲み物に生まれ変わるのです。
Chapter 4 コーヒー上級者を目指そう!
コーヒー豆を知って、淹れ方を学んで、アレンジの仕方を習った次のステップをいくつか紹介しています。
- Section 1 フードペアリング
- Section 2 カッピング
- Section 3 ブレンド
- Section 4 焙煎
個人的には「上級者」を自認しなくても、これらのことを楽しんでいいと思っています。カッピングは仕事として行うことが多いかもしれませんが、フードペアリングやブレンドは自分で、または友人とコーヒーを楽しむための「趣味」としてもいいでしょう。
焙煎に関しては、プロが行う焙煎機による焙煎の説明が3ページ(プラス写真1ページ)であるのに対し、ホームローストには6ページ割いています。これは趣味で自宅で焙煎する人のために書かれたと考えていいでしょう。
Chapter 5 コーヒー・ア・ラ・カルト
コーヒーの歴史や文化的側面からトリビアまで、コーヒーを楽しむうえで知らなくても困らないけど、知っていても楽しいことが紹介されています。
この本のここが好き
この「最新版 珈琲完全バイブル」を選ぶ人は、それぞれ「ここが好き!」というところがあるでしょう。このブログサイトの「コーヒーを淹れてみた」にも「十人十色のハンドドリップ」と冠した投稿が多いのは、それ故です。ここでは敢えて私が個人的に「ここが好き!」と思うところを紹介します。
ホームローストの説明が丁寧
上述のように、プロによる焙煎機を使った焙煎についてさらっと説明した後に、手網を使ったホームローストについて丁寧に説明しています。私も時々自宅で手網を使って焙煎しますので、ここはよく参照します。
この「最新版 珈琲完全バイブル」と以前紹介した「極める 愉しむ 珈琲事典」は、街の本屋さんで買えるコーヒーに関する本の中でホームローストについて丁寧に説明した数少ない本のうちの2冊です。
フードペアリングの説明が豊富
以前「おうち“MUJI”カフェ:ダーク&スイーツ編」で「コーヒーと食べ物の相性」について軽く触れました。そのフードペアリングの説明にこの「最新版 珈琲完全バイブル」では12ページを割いていて、しかもそれが「コーヒー上級者を目指そう!」に登場します。フードペアリングの理論も実例も豊富です。
ワインの世界では、ワインと相性が良い食べ物を合わせる「マリアージュ」はソムリエの資質のひとつとされる、つまりワイン上級者がたしなむべきことのひとつのようです。個人的には、コーヒーと食べ物のペアリングは、もっと庶民的なものであってほしいです。

このブログでも、コーヒー豆専門店や自家焙煎のカフェで買ってきたコーヒー豆でコーヒーを淹れて食べ物と合わせたり、またはイートインできるパン屋さんで買ってきたパンに自宅にあるコーヒーを合わせたりして、紹介していきます。
フレーバーの説明が丁寧
コーヒー好きが一緒になってコーヒーを飲み始めるとコヒ話が止まらなくなり、そこで飲んだコーヒーの何が好きか話し始めると、もう大変なことになります。以前紹介した「HIRO COFFEE 本店」でOrava & Kani Kahviさんと再会した時にコーヒーの味わいについて盛り上がったことは良い思い出です。
そんな時でも、自分が好きなコーヒーのフレーバーを言葉で説明するのは簡単ではありません。この「最新版 珈琲完全バイブル」では、そんなコーヒーのフレーバーをカッピングの観点から丁寧に説明しています。
もちろん、コーヒーの味わいを教科書通りに説明する必要はありません。ある日飲んだコーヒーの味わいが、この本で見た記述でうまく説明できると思ったら、それを人に話してみる。そうしているうちにいつか、コーヒーのフレーバーを自分の言葉で説明できるようになるのではないでしょうか。
この本のここが惜しい
カリタの3つ穴(台形)の説明がないんです… ペーパードリップの説明の冒頭では、いわゆる「カリタウェーブ」の説明で「3つの穴が一列に並んだ従来品」について触れていますが、その詳説はありません。これが潮流ならば、仕方ないですかね。
このブログサイトのメイン画像もカリタの3つ穴ですし、「やっぱりKalitaが好き」と題してカリタの3つ穴ドリッパーについて紹介したこともあります。手前味噌になりますが、この「やっぱりKalitaが好き」は人気投稿のひとつです。カリタの3つ穴の根強いファンがいる、ということでしょう。
同じ台形でもメリタのドリッパーとは穴の数が違う、つまりお湯が抜ける速度が違いますので、淹れるコーヒーの味わいも変わります。たくさんある「唯一無二」のドリッパーのひとつ、ということです。それでもこの本が「最新版」である以上、今のトレンドに合致した内容にすることは受け入れるべきでしょう(カリタの3つ穴ファンなら理解していただけるボヤキでした)。
最後に
今更言うほどのことではありませんが、コーヒーは奥が深いですね。コヒ友と会って、いくらコヒ話をしても尽きないのは、この奥深さ故のことでしょう。この「最新版 珈琲完全バイブル」は、街の本屋さんの棚に並んだ本の中で、その奥深さをかなりのレベルで紹介する数少ない本の中の1冊です。
これからも続く私の珈琲修行の中で、この本はちょくちょく参照させてもらうことになりそうです。
コメントを残す