名駅から歩いてすぐ、コーヒー好きにはたまらない品揃えのカフェを見つけてしまいました。GLITCH COFFEE @9hさん。精製方法で味わいがまったく変わる浅煎りコーヒーの奥深さに気付かされます。
今回はコーヒー豆や抽出方法のマニアックな話題が多めなので、最後に解説も入れました。
名駅からちょっと歩いてみた
最近の名古屋駅と言えばシンボル的なモニュメント「飛翔」がなくなって、ちょっと寂しくなりましたね。一方でリニア新幹線駅の工事も進んでいます。その工事現場を横目に見て進んで、迦具土神社の先にGLITCH COFFEEさんがあります。
話に聞いていたGLITCH COFFEEさんに足を踏み入れ、その雰囲気に何かを期待していると、すぐに親切なスタッフさんが声をかけてくれました。その説明の丁寧さに期待が高まるのですが、それがダテでないことが後に分かりました。

コーヒーに詳しくない人にも分かる丁寧な説明から始まるのですが、しばらくすると、まだ注文すらしていないのにコーヒー好き同士のコーヒー談義になっていました!コーヒーに詳しかろうが、そうでなかろうが、コーヒーを愉しんでほしい、という気持ちが嬉しいです。
で、選んだのは、長らくお気に入りのエチオピアと、最後に飲んだのがいつか分からないくらい久々のコロンビア。それぞれ何種類かある産地・精製方法の中から気になったものを選びました。もちろん、挽きたての豆をハンドドリップで淹れていただきます。
日曜は、ORIGAMIで
話は前後しますが、初来店のこの日は日曜日。GLITCH COFFEEさんでは数種類のドリッパーを使い分けていて、日曜はORIGAMIドリッパーの日だそうです。ORIGAMIと言えば、以前紹介した小猿珈琲さんやTRUNK COFFEE STANDさんで使われていて、横浜の南蛮屋さんでも売られていたカラフルな陶器製ドリッパーです。抽出の過程でフィルターのヒダにコーヒー粉が残るのが特徴です。

先に2種類のコーヒーを選んだことを書きましたが、コーヒーの飲み比べができるのもGLITCH COFFEEさんの特徴で、上の写真のように違う種類のコーヒーを同時に淹れていただけます。
挽く前の豆の香りを嗅がせていただいた時点で明確な個性の違いを感じていましたが、2杯の淹れたてのコーヒーがテーブルに運ばれると、さらに鮮烈な香りが鼻腔を襲います。これはどっちの香り?と考えながらいただいた、そのお味は、

まずアナエロビック(嫌気性発酵)のエチオピアは、ガツンと来る味があるけど、苦味じゃない。アナエロビック特有のスパイシーさが前面に出ています。以前の浅煎りにはなかった味わいですね。この尖がった味に慣れると、次第にこれまた特有のフルーティーさや、経験したことがない甘味などの個性が顔を出します。
続いてコロンビアは、Cherry Madnessという挑戦的なネーミングの精製方法。テーブルに運ばれてきた時の鮮烈な香りの正体はコレでした。その味わいは何とも形容し難い、カフェブロガー泣かせな独特のもの。そんなもの食べたことがないのですが、もし熟成したグレープフルーツピールなんてものがあったらこんな味かな、と想像してしまいました。

新しい精製方法として注目されたアナエロビックのコーヒーを飲む機会がここ数年で増えましたが、スタッフさん曰く産地では生産・精製方法の進化がさらに続いているそうです。そんな個性的なコーヒーを揃えたGLITCH COFFEEさんはコーヒー好きにとって有難い存在です。
土曜は、GINAで
数種類のドリッパーを使い分けて、と先に書きましたが、気になる見慣れないドリッパーを使うのが水曜から土曜とのことでしたので、それを目当てに土曜日に再来店しました。予告来店に気付いたスタッフさんが声をかけてくれて、相変わらずの丁寧さでコーヒーの説明をしてくださいました。
じつはここに来る前に別のカフェでエルサルバドルとコスタリカのブレンドを飲んでいました(はい、カフェのはしごです)。きっとGLITCH COFFEEさんなら同じ産地で違う個性の豆を揃えているのでは、と思い訪ねると、期待を裏切りませんね。選んだのは、ナチュラル製法の豆が多い中で敢えてウォッシュドのエルサルバドルと、個性強めなアナエロビックのコスタリカです。

上の写真を見ると、ドリッパーの下からコーヒーが細く出ているのが分かりますか。久屋大通公園のHARIO CAFEさんやBASE COFFEEさんで使っている浸漬式のドリッパーはコーヒー粉をお湯に浸した後、栓を開けてコーヒーを一気にサーっと落とします。このGINAドリッパーは落とし具合を調整できる、透過式と浸漬式の「いいとこ取り」だそうです。
そのお味は、

敢えてウォッシュドのエルサルバドルは、さすがスッキリした味わいです。その味がまた繊細で、一口目と二口目ですでに風味が変わるくらい。「味の変化をお楽しみください」とのことではありましたが、ここまで繊細な味は期待を超えています。優しいフルーティーさが、風味を変えつつ最後まで続きます。
一方のアナエロビックのコスタリカは、個性強いですねぇ。浸漬式で淹れたこともあって、浅煎りらしからぬボディ感があります。苦味と紙一重のスパイシーさは前回いただいたエチオピアにも似ていて、苦いコーヒーが好きで浅煎りでは満足できん!なんてことを言う人にも飲んでもらいたい、浅煎りコーヒーの概念を変える逸品です。

この日のスタッフさんとの会話は、コーヒーの味わいと精製方法の進歩に始まり、生産国の事情や生産者の生活にまで及び、深く濃いものになりました。今、私たちがこうして日本で一杯のコーヒーを飲めるのも、コーヒー農園で働く人たちの努力があるから。そんなことにも目を向け、情報を発信するGLITCH COFFEEさんは貴重な存在です。
基本情報

GINA coffee maker
まだ見る機会が少ないGINAドリッパーも紹介しておきます。製品情報のページは英語ですが、正確に調整できるバルブや、ハンドドリップ (pour-over)・浸漬式 (immersion)・水出し (cold drip) の3種類の抽出方法があることなどが詳しく説明されています。
アナエロとか、浸漬式とかって、何?
今回はコーヒーのマニアックな話が多くなってしまいました。少し解説しておきましょう。
コーヒー豆の精製方法
コーヒー豆は「豆」と言っても、実際はコーヒーチェリーという果実の種子です。農園で収穫されたコーヒーチェリーが「生豆」として出荷される前に様々な処理が行われますが、この処理方法の違いでコーヒー豆の個性が生まれます。
割りと一般的な製法は、果肉や種子の周りのヌメヌメ(ミューシレージと呼びます)を水洗いしてから乾燥させる方法で、ウォッシュドと呼ばれます。スッキリした仕上がりになり、今回いただいたエルサルバドルはこのウォッシュドの豆です。

果肉が付いたままのコーヒーチェリーを乾燥させてから、カサカサになった果肉と種子の外側の殻(パーチメントと呼びます)を一緒に脱穀する製法をナチュラルと呼びます。果肉の香りが種子に移り、フルーティーな味になるのが特徴です。
他にも水を使わず機械でミューシレージを取り除くセミウォッシュドや、果肉だけ取り除きミューシレージが付いた状態で乾燥させるパルプドナチュラルやハニープロセスなどの精製方法があり、それぞれ違った個性の豆が出来上がります。

今回いただいた4杯のうち、3杯はアナエロビック(嫌気性発酵)という比較的新しい製法で作られた豆で、最近よく見かけるようになりました。精製の過程で果肉が付いたコーヒーチェリーを、空気を遮断した状態で嫌気性菌を使って発酵させる製法です。

アナエロビックは新しい製法であり、色々な方法が試されているそうです。同じ嫌気性発酵でも、その方法により味わいが変わるとのことですが、スパイシーな独特の風味が多くの製法に共通のようです。
以上はコーヒーチェリー収穫後の精製方法の違いで、それだけでも違った個性の豆ができるのですが、同じ豆でも淹れ方を変えて違う味わいにすることもできます。
コーヒーの抽出方法、透過式と浸漬式
ハンドドリップで一般的なのが透過式です。底に穴が開いたドリッパーにペーパーフィルターを入れて濾す方法がポピュラーですが、他にも金属のメッシュフィルターや、セラミックフィルターなどもあります。文字通り、フィルターを透過させながらコーヒーを抽出します。
下の写真は自宅で使っているKINTOの陶器製ドリッパーです。これと少し違った形で、下のフランジ部分がないものがGLITCH COFFEEさんでも使われていました。GLITCH COFFEEさんのドリッパーは、色はもちろん黒でした!
上の写真にある2種類のフィルターについては「浅煎りのゲイシャを入れてみた ペーパーフィルター VS ステンレスフィルター」で説明しています。興味があれば読んでみてください。
透過式ではお湯を注ぐ速さを変えることで味をスッキリさせたり、コクを出したり、好みの味を出せるのが特徴です。その反面、注ぐ速さとタイミングが定まらなければ味が安定しないという欠点もあります。
一方で、コーヒー粉をお湯に浸して抽出し、時間が経ったら一気に濾すのが浸漬式です。代表格はフレンチプレスでしょう。下の写真はつい最近買ったばかりのHARIO製フレンチプレスです。東急(じゃなくなった)ハンズや百貨店などでも売っていますが、せっかくかので久屋大通公園のHARIO CAFEさんで購入しました(はい、ただのコーヒーオタクです)。
浸漬式は透過式より味が安定しやすい利点があり、一般的に透過式よりもしっかりした味わいになります。
上述のHARIO CAFEさんやBASE COFFEEさんで使われているものは形が透過式ドリッパーに似ていますが、お湯に浸して抽出してから一気に濾すので浸漬式です。
今回紹介したGLITCH COFFEEさんのGINAは、この透過式と浸漬式の「いいとこ取り」ドリッパーということになります。
個性を備えたコーヒー豆を、淹れ方を変えて味わいを変える。コーヒーの愉しみ方は、奥が深いですね。これからもこのブログで、コーヒーの淹れ方、楽しみ方を色々紹介していきたいです。
参考文献
これらの本にはいつもお世話になっています。
最新版 珈琲完全バイブル
コーヒーノキの栽培からコーヒーの淹れ方、楽しみ方のすべてがわかります。最新情報としてアナエロビックについても紹介しています。
極める 愉しむ 珈琲事典
こちらもコーヒーノキの栽培にい始まり、淹れ方や楽しみ方や、精製方法による味わいの違いなども説明されれいます。
THE COMPLETE GUIDE TO COFFEE
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