熱田神宮詣のお土産、きよめ餅とお抹茶をいただけるお店、喜与女茶寮さんに行ってきました。「昭和レトロ」が一つの業態になる中、素のままで昭和を感じるお店です。

熱田神宮詣での後で

私が愛知に来たばかりの頃、地元出身の同僚に名古屋名物は何かと聞いたところ、自虐的に「熱田土産に『きよめ餅』というのがありますが、普通のお饅頭です」と言われたことは今でも覚えています。食べてみると、普通に、美味しい「お饅頭」でした。

そんな私でも今はきよめ餅を名古屋名物だと思っていますし、しばらく名古屋を離れた後に食べると、懐かしいと感じてしまいます。この熱田名物の由来はきよめ餅総本家のウェブサイトで説明していますので参照してみてください。

「きよめ餅 喫茶室」の店内。手前のショウウィンドウにきよめ餅が並んでいます
お店に入ると手前が売店で、右奥に「喜与女茶寮」の入口があります。

由来を見ると熱田神宮参詣の前にきよめ茶屋に行くのが習わしだったようですが、私は参詣の後にここできよめ餅とお抹茶をいただくのが好きです。この日も熱田神宮参詣の後に寄りました。

喜与女茶寮の、寂びた雰囲気の店内
喜与女茶寮の店内は素のままで「昭和レトロ」を感じます。自然な古さは良いものです。

正直に申しますと、初めてこの喜与女茶寮さんに来た時は、古臭くてうら寂しい場所だと思いました。しかし業態の一つとして作られた「昭和レトロ」を売りにした場所は、古いものを不自然にかき集めたり、中には昭和風の真新しいものも混ざっていて、あまり魅力を感じません。それに比べると喜与女茶寮さんの自然な昭和感はいいものです。

喜与女茶寮店内の床の間スペース
店内の床の間スペースは、ちょっとベタですが、いい雰囲気です。

この日もきよめ餅とお抹茶のセットをいただきました。写真を見ても分かりませんが、これは「栗入りきよめ餅」です。残暑が異様に長く続いてるとは言え、10月は無性に栗を食べたくなることがあります。

きよめ餅と、抹茶に、緑茶が添えられた抹茶セット
「きよめ」の焼き印が分かりますか?黒文字が添えられていますが、この後いつものように手に取ってガブッといただきました。

先程は「お饅頭」なんて書きましたが、上品な味の和菓子ですよ。もちろん抹茶とも合います。熱田神宮参詣の際はまた寄ります。

基本情報

愛知県名古屋市熱田区神宮3-4-12

平日 9:00~18:00|土日祝 8:30~18:00、月曜定休
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください

喜与女茶寮の入口「熱田名物きよめ餅喫茶室」

熱田神宮

前述のように、熱田神宮参詣の前にきよめ茶屋に行くのが習わしだったようです。

熱田神宮は五穀豊穣、家業繫栄を祈ってお参りする人々が、昔ながらの神域に引きも切らず続いて居ります。天明五年頃(江戸中期)、「きよめ茶屋」が設けられ、参詣の人々はここでお茶を頂いて疲れを休め、姿を正して神前にぬかずくのを習わしとしました。

きよめ餅総本家ウェブサイト「きよめ餅の由来」(http://www.kiyome.net/origin.html)

以前「茶寮 汐入 – 白鳥庭園」の紹介で説明したように、熱田神宮には須佐之男命スサノオノミコトにより八俣ヤマタ大蛇オロチの体内から取り出され、後に倭建命ヤマトタケルノミコト(日本武尊)の佩刀となり、三種の神器の一つである草薙剣クサナギノツルギが納められています。

熱田神宮の社殿。右手前に拝殿、左奥に本殿が垣間見えます。
熱田神宮参詣の際は、どうしても手前にある立派な拝殿に目がいってしまいますが、草薙剣が納められた本殿はその奥にあり、かろうじて垣間見ることができます。余談ですが、私が社殿の写真を撮るときは敬意を表して必ず手を合わせてからシャッターを切ります。

最近の歴史では(倭建命の時代に比べて最近、という意味です!)、織田信長が桶狭間の戦いの前に勝利を祈願して参詣し、戦いに勝利した後に塀を奉納しました。その「信長塀」は今でも残っています。

熱田神宮の杜に佇む信長塀と、奥に見える西八百萬神社
信長塀は日本の歴史の大きな転換点となった出来事に因んだ遺構ですが、参詣者の中でも足を止めて見る人は少ないようです。左奥に見えるのは西八百萬神社。

以前は境内にお抹茶ときよめ餅をいただける場所があったのですが、今年(2021年)その場所は「くさなぎ広場」に姿を変えてしまいました。良く言えば「キレイ」に生まれ変わったのですが、「映え狙い?」と勘繰ってしまうのは私だけでしょうか。真新しい東屋の屋根の上に苔が養生されているのには、浅ましさすら感じてしまいます。

熱田神宮の基本情報

愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1

日本の古代史を読む

ここに紹介する本は私が学生時代に買って、今でも愛読書となっている古事記の全訳注本です。各章が原文の書き下し文、現代語訳と注釈、解説から構成され、専門知識がなくても無理なく読めます。 須佐之男命と八俣の大蛇は上巻、 倭建命は中巻に登場します。

著者

次田真幸

発行者

野間佐和子

発行所

講談社

発行日

1977年12月10日 第1刷発行

定価

968円 (税込み、2023年3月時点)

著者

次田真幸

発行者

野間佐和子

発行所

講談社

発行日

1980年12月10日 第1刷発行

定価

1,023円 (税込み、2023年3月時点)

著者

次田真幸

発行者

野間佐和子

発行所

講談社

発行日

1984年7月10日 第1刷発行

定価

1,056円 (税込み、2023年3月時点)

余談ですが、草薙剣と言えば源平合戦のクライマックス「壇ノ浦の戦い」で安徳天皇と共に海に沈んだ話が知られていますね。これを基に、熱田神宮に納められている刀は本物ではない、なんてことを言う人もいます。実際は、皇居に納められ、かつては天皇が携行することもあった草薙剣と八咫鏡ヤタノカガミ御霊代みたましろまたは形代かたしろと呼ばれる「分身」で、今も昔も草薙剣の本体は熱田神宮、八咫鏡の本体は伊勢神宮に鎮座しています。

この形代は波乱の歴史の中で何度か代変わりしているそうです。現在皇居に納められている三種の神器のうち、八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマだけは本体とのことです。

いいね、シェアする!