5月の第2土曜日「世界フェアトレード・デー」に名古屋で開催されるイベントに行ってきました。フェアトレードと言ってまず思いつくのはコーヒーではないでしょうか。このイベントには様々な想いでコーヒーの仕事に携わる人たちが集まります。

世界フェアトレード・デー・なごやに行ってきた

このイベントではフェアトレードを身近に感じられるための催しが行われ、講演を行うステージ、様々なフェアトレード製品を扱うマルシェ、日常生活で使える雑貨を作るワークショップ、そして、コーヒー・サミットから構成されます。このコーヒー・サミットではフェアトレードに限らず、トレーサビリティやオーガニックなど、コーヒー生産者の生活と農業の持続性に配慮した様々な取り組みを行う方々が出店しています。

コーヒー・サミットに出店した22団体すべてを訪ねることはできませんでしたが、縁あってコーヒー飲み比べをさせていただいた方々を紹介します。

イベント基本情報

愛知県名古屋市中区丸の内3-6 シバフヒロバ

2013年5月27日(土)
11:00~18:00

第13回 世界フェアトレード・デー・なごや

SOYOGO COFFEE 冬青珈琲店

飲み比べ用のオリジナルマグカップを入手し、まず向かったのは冬青珈琲店さん。以前モリコロパークに行った時にお店に訪れ、そこでこのイベントの話を聞きました。この日は晴天の屋外イベントでしたので帽子を被ってサングラスをしていましたが、すぐに気付いてくれました。前回来店時は相当話し込んじゃいましたから。

SOYOGO COFFEE 冬青珈琲店、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
モリコロパークの店舗の品揃えは圧倒的でしたが、その中から厳選した豆が並べられています。

いただいたのはアナエロビックのメキシコと、訳あって試飲させていただいたエチオピアのG1ナチュラル。メキシコはトロピカルなフルーティーさがあり、アナエロビック特有の「スパイシーさ」はないのですが、独特の個性があります。マスターの言う通り、ホットでも夏に合う爽やかさです。

エチオピアも、これぞエチオピアのナチュラル、という上品なフルーティーさがあります。こちらも夏に合いますね。

SOYOGO COFFEE 冬青珈琲店、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
養蜂もしている冬青珈琲店さんですから、蜂蜜も並んでいます。

やはり、コーヒー談義は尽きないですね。話題はスペシャルティコーヒーの個性や、コーヒードリッパーの種類と淹れ方に、愛知のカフェなど多岐に渡りました。実はマスターとスタッフさんが最近、私が以前住んでいた所の近所にあり通っていたOISEAU Coffeeさんに行っていたことも判明。コーヒーの縁は繋がります。

店舗の情報

愛知県長久手市茨ケ廻間乙1533-1 モリコロパーク 地球市民交流センター内1F

10:00~17:00 月曜定休
最新情報はお店のウェブサイトでご確認ください

合わせて見たい

前述のように、少し前にモリコロパークの店舗を伺っていました。

SOYOGO COFFEE 冬青珈琲店

SOYOGO COFFEE 冬青珈琲店

モリコロパークの休憩処のようなお店が、実はスペシャルティコーヒー専門店。いろんな人にコーヒーの良さを知ってもらえたら、そう思える場所です。

斎藤珈琲×南陽高校 Nanyo Company部

続いて訪れたのはフェアトレードを前面に出している斎藤珈琲さん。コーヒー豆の卸しやOEMを手掛けていて、フェアトレード商品をプロモートする南陽高校 Nanyo Company部の生徒さん達とコラボしています。

斎藤珈琲×南陽高校 Nanyo Company部、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
フェアトレードのマークと、メキシコらしいイラストが印象的な麻袋。広報に高校生らしさがあるのもリアルです。

いただいたのは、偶然ですが引き続きメキシコのコーヒー。メジャーなコーヒー生産国が居並ぶ中南米と違い、北米のメキシコ産コーヒー豆はまだ多く流通していないようですが、その存在感は増していると感じます。後で分かったことですが、実はメキシコは世界でも有数のフェアトレードコーヒー認証国だそうです。

いただいたのはメキシコの浅煎りと深煎りのブレンド。コーヒーの良さがしっかり出ていながら、まろやかな味わいです。

斎藤珈琲×南陽高校 Nanyo Company部、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて

斎藤珈琲の方からフェアトレードの話を伺ったのですが、その熱意が印象的でした。その後訪れたステージでフェアトレードの活動を行っている団体の講演を聞くと、取り寄せた生豆を斎藤珈琲で焙煎してもらう、なんてお話もしていました。

美味しいコーヒーを飲むことと、生産者を守ること。そこに熱意を持つ人がコーヒーの仕事に携わっていることは、コーヒー好きの日本人として誇りに思えます。

RoCoBeL

次に訪れたのは、ミャンマーのコーヒーを前面に出したRoCoBeLさん。ミャンマー産のコーヒー豆の流通はここ数年で増えてきたようです。4年前に神戸で行われたJapan Coffee Festivalに出店したOrava & Kaniさんのコーヒーが初めて飲んだミャンマー産コーヒーだったというコトは、今でもよく覚えています。

RoCoBel、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
Orava & Kaniさんのミャンマーは浅煎りでしたが、RoCoBeLさんでは浅煎りから深煎りまで、違った味わいを楽しめます。

ミャンマーから仕入れた生豆を日本で製品化する過程では障がい者の方々も携わり、障がい者の就労支援にも一役買っているとのこと。以前紹介したToricot Coffeeさんの取り組みと同じだな、と思って話を聞いていると、従事している障がい者が描いたイラストをドリップバックのパッケージに使用していることもToricot Coffeeさんと同じであることが判明。なんだか嬉しくなってしまいました。

RoCoBel、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
障がい者が描いた絵をデザイナーがイラスト化したというパッケージ。コーヒーを通して人が繋がる想いを表しています。

ミャンマーの生産者を実際に訪れるという社長さんのお話も印象的でした。「ミャンマーは国内情勢が悪かったことがありますよね」と尋ねると、「今でも悪いです」とのこと。日本のメディアで取り上げられることが少なくなっただけで、情勢は回復していないそうです。そんなミャンマーのコーヒー生産者を支援するRoCoBeLさんには敬意を表します。

what’s!? coffee

次に訪れたのは雰囲気がガラッと変わって、大河ドラマで盛り上がる岡崎から出店したwhat’s!? coffeeさん。「これ、店名ですか?」と聞いてしまいました。

メニューをよく見ると、ブレンドの「姫著莪ひめしゃが」には「言葉と風味のブレンド」という意味深なキャッチフレーズがあるのですが、他のスペシャルティコーヒーと違い味の説明がありません。「『飲んでみろ』ということですか?」と冗談っぽく聞くと「はい!」とのことでしたので、じゃぁ飲んでやる(笑)ことにしました。

what's!? coffee、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
白を基調にしたwhat’s!? coffeeさんのブース。実店舗がどんな雰囲気か想像してしまいます。

そのお味は、スッキリした浅煎りで優しいフルーティーな風味。ナチュラルの優しさとウォッシュドのスッキリさがあるな、と思い訪ねると、ナチュラルとウォッシュドを使ったブレンドとのこと。飲み終わってから「種明かし」もしてもらいましたが、これは是非実店舗で確かめてください。「なるほど」と「へぇー」のブレンドでした。

what's!? coffee、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
コーヒーで色を付けたというメニューもいい雰囲気を出しています。

扱うスペシャルティコーヒーはフェアトレード認証ではありませんが農場も指定されていて、ちゃんと生産者のことも考慮されています。

スタッフさんとはしばらくホッコリする会話を楽しみました。岡崎の実店舗も是非訪れてみたいです。

店舗の情報

fushiiro

愛知県岡崎市戸崎町東山44-30

月・木・金 13:00~20:00
土・日・祝 8:30~18:00
最新情報はお店のInstagramでご確認ください

yurushiiro

愛知県岡崎市竜泉寺町後山262-1

11:00〜18:00
日曜・月曜定休
最新情報はお店のInstagramでご確認ください

FARMERS PASSION

コーヒーの生産国としてはメジャーではないネパールを前面に出しているのはFARMERS PASSIONさん。「ネパールの直営農園」って?と思い訪ねると、文字通りFARMERS PASSIONさんがネパールでコーヒー農園を経営しているとのこと。日本でこのビジネスモデルは珍しいですね。話を伺うと「生産者」ならではの取り組みがいろいろありました。

FARMERS PASSION、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
コーヒーと、スパイスと、クラフトコーラ。一見関係なさそうですが、すべて直営農園産の素材で作られています。

興味深かったのは、農園ではオーガニック(無農薬)栽培をしているため、害虫除けにはスパイスとなる植物を植え、収穫したスパイスは実店舗で提供するカレーにも使っていること。直営農園ならでは、ですね。他にも、収穫したコーヒーチェリーの果肉を使ってクラフトコーラを作ったり、焙煎した時に出るチャフ(薄皮)も料理に使ったり、コーヒーを最大限活用しているそうです。

FARMERS PASSION、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
こちらがその、コーヒー農園で栽培されたスパイス。カフェで提供するカレーにも使っていて、販売もしています。

飲み比べでいただいたのは中深煎りで、苦味もありながら、全体的に優しい味。苦いコーヒーが苦手な人でもコーヒーの良さを味わえそうな味。他にもアナエロビックの豆もあるそうですが、正直に申しまして、ネパールでもアナエロビックを行っていることは知りませんでした。

(「アナエロビックって何?」と思ったらGLITCH COFFEEさんの紹介記事を読んでみてください。コーヒー豆の精製方法について少し説明しています。)

店舗の情報:モルカフェ

FARMERS PASSIONさんの数ある活動の一つとして、豊川で実店舗「モルカフェ」を運営しています。こちらも是非訪れてみたいです。

愛知県豊川市東豊町5-22

名城コーヒー焙煎所

馴染みのある地域で、聞いたことがない店名だな、と思ったらオンライン販売のみで実店舗はないとのこと。長らくお気に入りで、テッパンのエチオピア イルガチェフ ナチュラルをいただけるとのことで、早速注文しました。

そのお味は、イルガチェフ特有のフルーティーさもあるけど、やさしい苦味もちゃんと感じる。

名城コーヒー焙煎所、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
実店舗がないとはいえ、個性的な看板はいい味を出しています。

お手伝いをしているという若い女性スタッフさんは謙遜気味に「コーヒーには詳しくないんです」と言いながら、このイルガチェフは朝食に合いそうと、自分の感想を伝えてくれました。イベント開始前、まだ早い時間にマスターがスタッフさんに淹れてくれたとのこと。確かに優しい中に苦味がある味わいは、目覚めに良さそうです。

実際にコーヒーに詳しくないかは別として、コーヒーの個性から、その自分なりの愉しみ方を見つけられるのはいいですね。

名城コーヒー焙煎所、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
この大胆な味の説明、好きです。もちろん、添えられたものも。

ここではマスターが考えたというコーヒークイズがありましたが、超ムズでした。コーヒーにお詳しいようですから、なんて煽てられて挑戦しましたが、9問中6問しか正解できませんでした。超ムズです。

フェアトレード ドリップバックプロジェクト

実は青年海外協力隊の隊員だった私が気になって訪れたのは、派遣国として話題になることがあるラオスのコーヒーを掲げた「ドリプロ」ことフェアトレード ドリップバックプロジェクトさん。学生さんが運営する団体だそうです。

ラオスは前出のミャンマーとも国境を接してます。かつては、高収入源となりそうなケシの栽培が逆に貧困を生むという問題を抱えた国の一つでした。今ではこのような問題は改善に向かい、ドリプロの学生さん達はラオスのコーヒー農園を実際に訪れ、コーヒー栽培について話を聞くことができるとのことです。なかなかできない、貴重な体験でしょう。

学生団体フェアトレード ドリップバックプロジェクト、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
イベント出店がメインの学生団体とのことで、ブースではその活動の様子も垣間見れます。

飲み比べでいただいたのは、ラオス産の浅煎り。浅煎りなのにしっかりした味わいがある、個性的な味です。実際、浅煎り特有の酸味より、香りを楽しんでほしい味とのこと。

学生団体フェアトレード ドリップバックプロジェクト、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
実はこのイベントでハンドドリップを間近に見る機会は多くありませんでした。やはりハンドドリップのキレイな所作を見るのはいいものです。

ラオス産のコーヒーという珍しさもあるのでしょうか、このブースはなかなかの人気でした。もっと話を聞きたい気持ちもありましたが、ちょっと遠慮してしまいました。また機会があれば、若い人たちのコーヒーに対する熱い思いを聴かせていただきたいです。

焚人旅人

何と読むのか分からずに訪ねた自家焙煎のお店は「タキビトタビビト」さんです。

飲み比べでいただけるのは、この日3度目となるメキシコ。「甘味がありますよ」とのことですが、飲んでみると実際に甘味を感じます。でもそれが、浅煎りの甘味とは違う(実際、中深煎りです)。もちろん、後から足したものでもない。

学生団体フェアトレード ドリップバックプロジェクト、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて

「タキビトタビビト」をローマ字で書くとこのように

TAKIBI
to
TABIBITO

になります。

どうすればこんな甘味が出せるのか尋ねると、焙煎方法が違うとのこと。始めは火を強くせずにゆっくりと水分を飛ばしながら中まで火を通し、1ハゼが始まったら強火にする。2ハゼが始まったら、酸味が抜けて苦味が出ないタイミングの30秒ほどで止める。

と教えていただきましたが、それが分かったところで同じ味が出せるわけじゃないですよね。

焙煎に詳しくない方にはよく分からない話だったかもしれませんが、このブログでも機会があれば焙煎について説明しようと考えています。ちなみに私は時々自宅で手網焙煎をします。

焚人旅人、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて
ブースを訪れたのはイベントの終盤で、ご覧のようにスイーツを取りに行っているとのこと。コーヒー豆の焙煎とスイーツ作りは分業しているそうです。

尚、このコーヒーは淹れたてではありません。丁寧に焙煎して鮮度がいい豆で淹れたコーヒーは、淹れてから時間が経っても味が落ちない。その自信があるから、淹れたてではないコーヒーも提供する。納得です。

kobalele coffee

最後に訪れたのは、焚人旅人さんが焙煎の「師匠」と仰ぐkobalele coffeeさんです。飲み比べでいただくのは、この日2度目となるミャンマー。ブースも先に紹介したRoCoBeLさんと並びで、「お隣と一緒ですよ」と言われました。

以前は市内でお店を出していたそうですが、今は「田舎」で焙煎屋をしているそうです。

kobalele coffee、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて

焙煎の「師匠」と言われるだけあって、焙煎の仕方でコーヒーの味が変わることを熟知されています。このイベントでは必然的にコーヒーの生産者が注目されますが、もちろん生産者が丹精込めて作ったコーヒー豆を丁寧に焙煎する仕事も大事です。

kobalele coffee、第13回世界フェアトレード・デー・なごやにて

焚人旅人さんもkobalele coffeeさんも東別院の朝市に出店されるそうです。同じ東別院のマーケットでも、以前紹介した「huu わたしのわがし」さんやBRIGHT COFFEE STANDさんが出店する「音食マーケット」と違い、実は私はまだ朝市には行ったことがありません。近いうちに機会を見つけて行ってみたいです。

イベントを振り返って

コーヒーサミットエリアを巡った人の中には、扱うコーヒー豆にフェアトレード認証のものが少ないことに違和感を覚えた人もいるかもしれません。しかしトレーサビリティ、つまり生産方法や流通の履歴を明らかにすることもスペシャルティコーヒーの条件の一つですので、それがコーヒー生産者とのフェアなトレードに繋がります。

実際、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)の基本構想には「コーヒーの生産環境や生活レベルの向上を図っていく」と記されているそうです。

冗談か言い訳のように聞こえるかもしれませんが、特別な美味しいコーヒーを求めて飲むということは、間接的にコーヒー生産者の生活向上に繋がるということです。

第13回世界フェアトレード・デー・なごや

このイベントで感じたもう一つのことは、学生さんの参加が多いこと。ひょっとしたら彼らの中には周りから「意識高い系」とか言われている人もいるかもしれません。いいじゃないですか、意識が高いことは!彼らのような若い人たちが、やがて微力でも世界に影響を与える人になることを願います。

余談ですが、マスク着用を求められないイベントに参加したのは、かなり久しぶりでした。やはりお互いの表情を見ながらコーヒーについて語り合えるのは、いいですね。

参考文献

最新版 珈琲完全バイブル

コーヒー生産地の概況や、スペシャルティコーヒーについても詳しく述べています。

監修者

丸山健太郎

発行者

田村正隆

発行所

株式会社ナツメ社

発行日

初版発行:2021年6月2日

定価

1,760円 (税込み、2023年3月時点)

コーヒーで読み解くSDGs

最近買った本で、このブログ記事を書いている時点でまだ読みかけです。近いうちにこのブログでちゃんと紹介します。

著者

Jose. 川島良彰

池本幸生 山下加夏

発行者

千葉均

発行所

株式会社ポプラ社

発行日

初版発行:2023年2月6日

定価

1,078円(税込み、2023年5月時点)

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