コヒ友やカフェのスタッフさんとコヒ話をすると大抵コーヒーを淹れる器具の話をしますが、今まで話題に挙がったことがないのが無印良品のドリッパー。台形で小さな一つ穴だからメリタみたいなのかな、と思っていますが、あまり知られていない「MUJIドリッパー」を実際に試してみました。

大阪府茨木市に住んでいた頃はよくCafe MUJIイオンモール茨木店さんでハンドドリップされたコーヒーをいただいていました。ここで使われていたのが無印良品製のドリッパーです。ショッピングモールの店舗で普通は期待できない、丁寧に淹れられたコーヒーが好きでした。

Cafe MUJI イオンモール茨木
私が名古屋に移り住んだ後、Cafe MUJIイオンモール茨木店さんは残念ながら閉店されました。生豆を店頭販売する貴重なお店の一つでもありました。

無印良品のウェブサイトですら多くを語らないこのドリッパーがどんなものか試してみました。

無印良品製ドリッパーの特徴

正しくは「磁器ベージュ ドリッパー 1杯用」です。前述のように台形で底に小さな穴が一つある、メリタのドリッパーと同じ構造です。

無印良品製ドリッパーの内部
リブは直線ですが、メリタのドリッパーとはパターンが微妙に違います。

サイズは一種類、「1杯用」です。ただ、この「1杯」が何を示すのか… このドリッパーに合わせたペーパーフィルターは「3~4人用」です。3~4カップ分入るサーバー1杯用、ということでしょうか??

無印良品製ドリッパーとHARIO V60の比較
前回使用したHARIOの「1~2杯用」V60ドリッパー(右)と比べても無印良品の「1杯用」ドリッパー(左)が大きいことが分かります。「磁器ベージュ」というだけあって色も違います。

製品紹介のページにも特に抽出方法の記述はありません。同じ形状のメリタ式と、一般的な注ぎ分ける方法を試してみました。豆は前回同様、深煎りのマンデリンと中煎りのグアテマラを使いました。準備の手順は「十人十色のハンドドリップ:準備編」を参考にしてください。

コーヒーに少量のお湯を注いで蒸らす
準備編」ではドリッパーの中に入れたコーヒー粉にお湯を注いで蒸らすところまで説明しました。

メーカー

無印良品

製品紹介

定価

990円 (税込み、2024年5月現在)

深煎りの豆に、お湯を一度に注ぐ

まず「メリタ式」について少し説明しておきます。前回使用した大きな一つ穴のHARIO V60ドリッパーはお湯の注ぎ方を変えて抽出速度を調整するように出来ているのと対照的に、メリタのドリッパーはお湯を一度に注げば、後は小さな穴から一定の速度で抽出されるようにできています。どんな淹れ方をしても安定した味が出せる仕組みです。詳しくはメリタのウェブサイトを参照してください。

メリタと同じ形状のMUJIドリッパーをこの「メリタ式」で淹れてみます。使う豆は苦味とコクが特長の深煎りマンデリンです。

一口飲んで、スッキリだけどしっかりした苦味を感じます。「ザ・深煎りコーヒー」と言った感じの味ですね。二口目以降でまろやかなコクも感じるようになりました。時間が少し経って温度が下がるとまろやかさが前面に出てくる感じです。

うーん、正直言って、HARIO V60で苦労して湯量を調整していた自分は何だったんだ、と思ってしまいますね、こんなに簡単に淹れてこの味がでてしまうんですから。最後まで渋味を感じることなく、まろやかな深煎りを美味しく飲めました。

深煎りの豆を、注ぎ分けて淹れる

良い機会なので「メリタじゃない式」の淹れ方も試してみました。同じ深煎りの豆をMUJIドリッパーに入れて、お湯を注ぎ分けてみます。

一口目で苦味を強く感じられます。渋味のない、しっかりした苦味です。コクもちょうど良い感じで、苦味とコクのバランスが絶妙です。コクが好きな私にはちょうど良い味です。スッキリした苦味も持続して、最後まで美味しく飲めました。

お湯を一度に注いでも、注ぎ分けても、安全な味が出せる、初心者にも優しいドリッパーのようです。

中煎りの豆に、お湯を一度に注ぐ

では、中煎りの豆ではどうでしょうか。前回の「『の』の字を描く、描かない」でも使用した、ナチュラル製法のグアテマラを使います。フルーティーな香りが特徴です。ただ、中煎りを狙って焙煎したのですが、ちょっと煎り方が浅かったです。

中煎りのグアテマラ
今回も手網を使ってホームローストしましたが、火から降ろすのが少し早く、浅めの中煎りになってしまいました。そんなこともあります。

まずは「メリタ式」で淹れてみます。焙煎してから二日目の豆ですので、浅めの中煎りですが蒸らすとプクーっと膨らみます。

まろやかな飲み口で、後味に爽やかな酸味があります。浅めの中煎りになったのがかえって良かったようで、フルーティーさがよくでています。カップの中で起こる、浅煎りのコーヒー特有の「味変」も楽しめました。少し温度が下がった頃の、ナチュラルならではのフルーティーさが絶妙です。最後までまろやかさが持続しました。

豆の状態が良かったとは言え、こんなに簡単に淹れてこの味が出せるのは嬉しいです。

中煎りの豆を、注ぎ分けて淹れる

では、同じ浅めの中煎り豆をMUJIドリッパーを使って「メリタじゃない式」で淹れるとどうなるでしょうか。

程よい苦味があって、後味の酸味も良い感じの余韻を残します。ただ、少し抽出に時間をかけ過ぎたようで、ナチュラル製法特有のフルーティーさが活きていません。良く言えば浅めの中煎りにしてはコクがある感じですが、「メリタ式」のように豆の良さを出すことができませんでした。少し温度が下がって苦味の感じ方が弱くなるとまろやかさが出てきますが、フルーティーさに欠けます。

まとめ:安定したスッキリ味が出せるドリッパー

予想通り、と言ってしまえばそれまでですが、「メリタ式」に則って淹れれば、深煎りでも中煎りでも、おそらく浅煎りでも安定してスッキリした味が出せるドリッパーのようです。注ぎ分けて抽出時間を調整してコクを出すことも出来るようですが、中煎りや浅煎りには向いていないかもしれません。

この「メリタ式」と「メリタじゃない式」の違いは淹れ終わった後のコーヒー粉の状態を見ても分かります。

コーヒー抽出後のコーヒー粉の状態の違い
左は「メリタ式」で淹れた後のコーヒー粉の状態。大きな「湯溜まり」ができた後にお湯がスーッと抜けたところ。右の「メリタじゃない式」では同じ大きさの穴からジワジワと抜けていった感じ。

じゃぁ、なぜHARIO V60のような大きな一つ穴のドリッパーを使って苦労してお湯の注ぎ方を調整するのか?これは好みの違いですね。スッキリ味のコーヒーも好き、コクのあるコーヒーも飲みたい、そんな私のような欲張りはHARIO V60のようなドリッパーがいいでしょう。そこまで苦労しなくても、いつでも手軽にスッキリしたコーヒーが飲みたい、という人にはメリタや無印良品のドリッパーがおススメです。

メーカー

無印良品

製品紹介

定価

990円 (税込み、2024年5月現在)

それでも大事なこと、湯と豆

「メリタ式」は手軽な淹れ方ではありますが、湯温と湯量は自分で調整する必要があります。メリタのドリッパーの内側には目盛りがあり、お湯を注ぐ量が分かるようになっていますが、MUJIドリッパーにはこれがありません。私は「準備編」で紹介したドリップスケールを使いました。ドリップスケールの表示を見ながら目的の湯量を一度に注げばいいだけですから、とにかく簡単です。

ドリップスケールはプロが使う道具とは考えずに、初心者が手軽に美味しいコーヒーを淹れるためのものと考えていいでしょう。

メーカー

HARIO

定価

7,700円 (税込み、2024年5月時点)

何よりも大事なのは、自分の好みのコーヒー豆を見つけることではないでしょうか。前回の「『の』の字を描く、描かない」の最後にも述べましたが、自分が住む地域で良いコーヒー豆を扱う店を見つけられるといいですよね。

Cupping Room @caffe bontainサカエチカ店
最近名古屋の栄で見つけた珈琲豆専門店Cupping Room @caffe bontainさんではコーヒー談義を楽しんで、豆選びも楽しみました。

外出を自粛しなければいけない時もありますが、近いうちにまた美味しいコーヒーとコーヒー豆を探すカフェめぐりを再開したいです。今は我慢の時ですね。

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